浅利

貝のお味噌汁が好きです。毎日食べたいくらいだけどそうもいかないので、週に1日か2日、浅利か蜆のお味噌汁にしています。
二十歳を少し過ぎた頃、友人と長崎、博多方面へ旅行に行きました。
夜行列車と新幹線を乗り継いで半日あまり、ようやく長崎に着いてお昼です。
ガイドブックで調べたお店で皿うどんとちゃんぽんを食べました。時間帯もずれていて店内は空いていました。お酒が飲めるようになったのが嬉しい年頃だったので、ビールも1本頼みました。
母親くらいの年代のお店の方に「女の子が昼間からビール飲むの?1本だけにしときなさいね。」と顔をしかめられました。
叱られた!と思って気落ちしたんですが、その後、どこから来たの?とか親しく話しかけてくれて嬉しくなりました。お母さんのように心配してくれた温かい方だったんですね。
たぶん有名な、高級そうなお店でした。皿うどんってあんかけ焼きそばみたいなものかなと思っていて、焼きそばみたいなのにうどんっていうのが変だよね~、などと思いながら美味しくいただきました。
長崎の街の教会や異人館は珍しくて美しく、楽しみながら回りましたが、石畳の坂道が多くて思ったより疲れました。真夏だったし、自分の住んでいるところより湿気も多くて暑かったのもありました、多分。
夕飯はやっぱりガイドブックで調べたステーキ屋さんに行く予定でした。
ところがそこに向かおうとした時、友人が路面電車?にバッグを置き忘れたのに気がつきました。青くなって見回すと偶然にも近くに交番があって、慌ててそこに駆け込みました。事情を説明したら、バッグが駅に届けられていることがわかりました。なくなった物はなくて、ちゃんと全部入っていました。「拾ってくれた人はお礼は辞退されています」とのことだったのでお巡りさんに感謝の伝言をお願いしました。いろいろ手続きが済んだらもう電車はなく、ステーキを食べに行くことができませんでした。近くで開いている1軒の食堂に入り、貝うどんというのを食べました。浅利がたくさん入っていて、あっさりしながらもお出汁がしっかりきいていて身体中にじんわりしみていく感じでした。ステーキを食べられなかった残念さは全く残りませんでした。
翌日は野母崎というところに行く予定でした。バスに乗ってしばらくして、乗り間違えたことに気づきました。どうしようどうしようと次の停留所の降車ボタンを押して前に行きました。
「おいくらですか?」と聞くと運転手さんが「あんたたち乗り間違えたんだろう?お金はいいから降りなさい。野母崎に行くんだったらあっちの停留所で○番のバスだから。今度は間違えないように乗りなさいよ。」と言ってくれました。
お言葉に甘えてバスを降りました。
結局、野母崎には行かれませんでした。
本当にアクシデントだらけの旅でした。人に助けられた旅でした。
浅利のお味噌汁を食べると、よく、長崎の貝うどんを思い出します。