ジャガイモで死にかけた話 <a href="https://www.shortnote.jp/view/tags/%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%BC%E3%83%88%E3%81%AA%E3%82%A8%E3%83%83%E3%82%BB%E3%82%A4%EF%BC%8F%E3%82%B3%E3%83%A9%E3%83%A0">#ショートなエッセイ/コラム</a>

小学生くらいの頃だろうか。幼なじみだった友人Kくんと彼の家の前で遊んでいた時。彼のお母さんが家から出てきて、ほくほくのじゃがバターをくれた。ゆでたジャガイモに十字に入った切れ目、その上に鎮座しますは、とろとろに溶けたバター。はぐふっと食らいついた。……うまい、うま過ぎる。宮沢賢治言うところの「天上のアイスクリーム」、この世のモノとは思えないくらいのうまさだった。僕はじゃがバターの虜になってしまった。

数日してもあのじゃがバターの味が忘れられない。しかし、当時は「じゃがバター」という名前も知らず、親にもせがむことができない。ああ、あの味。ある日の夕方、家で一人テレビを見ていた私は思い立った。思い立ってしまった。「よし、アレを作ろう!」と。レシピはない。頼れるものは「勘」だ。

台所を探ると首尾よくジャガイモが出てきた。よし。あの“うまいやつ”を作るためには、これを使うことは間違いない。……で、どうする。どう料理する? 「茹でろ! 茹でろ!」と当時の僕に時空の狭間から呼びかけたいが、いかんせん既に起こってしまった出来事である。いまにもまして頭のわるかった僕は、食器棚から取り出した鍋をコンロの上に置いて、鍋底にダイレクトにじゃがいもを設置。そしてコックツマミをねじった。ファイアッ。

何が起こったのか。目の前で展開された風景をそのまま描写しよう。鍋から火柱が立ち昇ったのだ。その勢いは天井の換気扇フードを焦がさんばかり。完全に火が牙を剥いている状態であった。

ーー家が燃える。

最悪の未来予測が頭の中を駆け抜け、完全にパニック状態に陥った。ヤバいヤバいヤバい! 思うやいなや、ツマミを逆方向にねじってコンロの火を止めた。幸いにも、火の勢いはすぐに衰え、ほどなくして完全に鎮火をした。そのあっけなさと、まだ脳裏に焼き付いている燃え盛る炎のビジュアルに、しばらく呆然とする小学生の僕。しばらくして、じわじわと安心が心の中に広がった。助かったのだ。僕は危うくジャガイモに殺されるところだった。

★じゃがバターの正しい作り方
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