オーストラリアでホームステイ7.アサドさん

オーストラリアで約一ヶ月ホームステイをしたことがある。ホストマザーは魔女みたいな人で、同居の中国人留学生の張さんはトレンディでいい人だった。



学校が始まった。


英語による英語の授業はひーひーだったが、楽しいものだった。


徐々に友人もできた。
日本の学校では、教室の机は1人に1つだと思うが、私が通ったオーストラリアの学校(英語教育機関)では1つの教室に4~5人で座れる大きなテーブルが何個かあり、自然とグループでディスカッションできるようになっていた。


毎日、なんとなく同じ場所に、同じ人が座る。
そしてなんとなく友達になっていった。
覚えている人だけでも、友達のことを書いておこうと思う。
今現在覚えていることが、これ以上私都合で無意識に改編されても戻れるように。


今回はアサドさんのことを書こう。




サウジアラビア出身のアサドさんは年上の男性で、他の学生たちとは異なり、群れず気高かった。
静かで真面目で、アラビア語訛りの英語が特徴的だった。
「number one(ナンバーワン)」の発音が「ナンバルワン」で、アラビア語は「R」の発音が完全に「ル」なんだなぁと思った。(正しいかは未だにわからないけど)



彼は掃除をするときに音楽をかけるといっていて、どんな曲を聞くのかと思ったらP!nkなどの所謂洋楽だった。
私もその頃Rihannaの「don't stop the music」とかP!nkの「so what」は聞きまくってたから(年齢ばれるなこれ)、なんとなくそんな話で仲良くなった。




そんなナンバルワンでロック&ポップなアサドさんはサムソナイトの鞄を使っていた。
シルバーのリュックで、甲虫みたいだったのを覚えている。(つまりコガネムシ系)




サムソナイトはアメリカの老舗メーカーだが、アサドさんは日本のメーカーだと思っていたらしい。

いや、もしかしたらサムソナイト・ジャパンの製品をピンポイントで使ってたのかもしれない。もうその辺はアサドさんのみぞ知る問題なのだけれど。



アサドさんは突然言った。



アサド「日本製品は素晴らしい…この鞄、サムソナイトの鞄だ。

サムソナイトは日本製品だろ?」


私「え?そうなの?(無知)」


アサド「しらないのか?このペンも日本製品だ。」


私「ふぅーん…? そうなんだ…?」


アサド「(ペンを見つめながら)センキュージャパン…」






急にどうしちゃったのですかアサドさん???

動揺した私はとりあえずなにか言わなくてはと焦った。




私「ユ、ユアウェルカム、サウジアラビア~…?」



アサド「…」



無視か~い

焦った結果無視か~い

異国の地で盛大に滑っとるやないか~い





別の日。

アサドさんは朝からご乱心だった。
ご自慢の日本製(?)サムソナイトの鞄をひっくり返したり、テーブルのまわりを見てみたりと忙しない。



私「どうしたの?」



アサド「俺の電子辞書が… ないッ!」


私「家に忘れてきたんじゃないの?」


アサド「いや違うッ!(食い気味)
誰かが…!誰かが盗んだんだ…?!」




劇画チックだけど、決めつけるの早くないかい?

あと殺伐としちゃうからやめてくれ~
疑心暗鬼になるから頼む口に出すのやめてくれ~




アサド「あ、あった」




サムソナイトから見つかった。
見つかってよかったね。


その後何事もなかったかのように授業を受け始めた。なんなの





帰国前、アサドさんに
日本に着いたら連絡するね、と言ってFacebookのアカウントを教えてもらった。



まずは友達申請をしようとアサドさんのページにアクセスする。





カバー写真には



Welcome to my world」という文字と背広を着て神々しく加工されたアサドさんの写真。







あれ
これなんかのヤベェやつかな?
と思って友達申請するのをやめたのは内緒の話だ。
(心で繋がってると信じてるヨ、アサドさーん!)