ありがとうの裏側

久しぶりに彼の部屋を訪れると無造作に床に置いてある結婚情報誌が目に入った。
「結婚するんだ。」
と彼は、挨拶するかのごとく軽く言った。
「そうなんだ。」
しか言えなかった私。
彼の六股が分かり連絡を取らなくなってまだ1か月目、彼に呼び出されてみたらこのザマだ。
でも、彼と出会ってからの4年は、出不精の私にとってはいろんな場所に2人で旅行に行ったり、大好きな本の話をしたり、くだらないことで笑いあったり大切な時間を過ごせた。
だから私は、彼に
「ありがとう。」
と言って部屋を出た。
ドラマみたいに、彼は追いかけてなど来やしないことは分かっているのに私は何度も振り向き、普段の倍以上の時間をかけてようやくマンションを出た。
すると堰を切ったように空港まで、私の頬を涙が伝わり続けた。
もう通うことのない彼の部屋までの時間を噛みしめるように。