らららメゾン



わたくしの知人に、所謂『逆タマ』にのったっていう男性がいた。

年下の弟みたいに甘えてくる彼が、なんでそんなことになったか、経過は知らないけれど
可愛い女の子と知り合って、そりゃあ見事な逆タマにのった。

可愛い彼女の御実家は、もんのすご~~いお金持ち。

わたくしも、2人の披露宴に呼ばれたんだけれども、
「ちょっとスピーチお願い」なんて言われて、あ~ハイハイって簡単に考えて了承して、
いざ当日会場に入ってみれば、TVカメラ3台も入っているし
招待客400人超えって、マジかー。

2次会はクラブ貸切で、参加者のファッションコンテストなんてやっちゃってさ
商品がまた凄くて。TVだの、ステレオだの。

とにかく
「すっげえなあ、一体いくらかけたんだ」って口あ~~んぐりだった。
色々結婚式には呼ばれたけれど
わたくしの呼ばれた披露宴の中じゃ、間違いなく一番豪華な結婚式だった。

2人はその披露宴が終わると3週間のヨーロッパ一周新婚旅行へ。

あ~~~、あるところにはあるんだね~~って、わたくしは
ずーっと口ぽっか~~んだった。

きっと彼が結婚しなければ、覗きようもなかった世界。

で。

結婚後、彼女の御実家のアパートをひとつ、彼が託された。

お嫁さんの御実家は、マンションもいくつか持っていらっしゃったらしいんだけれども、
その回し方というか、管理の仕方を覚えるのに、
最初は学生相手のアパートからがいいだろうっていうので、託されたのだった。

学生用のアパートっていっても、わたくしが想像する、質素で堅実な
階段上るとカンカンカンカンって音がするぜ的な、昭和な感じのものじゃない。

何せ、新築。

彼は、外装デザインはもとより、
内装もあれこれアイデアを出して、力を入れていた。

出来上がったのは、おされな、薄いピンクの壁のいかにも「今風」な、アパート。
あまりにもおされだったので、わたくし、彼から写真を見せてもらった時
「・・・ラブホ??」って言って、大きく否定されたのだった。
す、すまん。

彼にしてみれば
そりゃ、お嫁さんの御実家に、「できる婿さん」ってのをアピールしたい。
これがまあ、初仕事といっていい訳だからね。

で、新築アパートの名前。
名前が問題になった。

「どうすればいいと思う??」

いやいや、そんな大事な名前、聞かれても、わたくしには思いつきませんがな。

「そんな事言わないで、姐さんも考えてよ~~。」

・・・まあ、〇〇荘って名前はダメだよねえ。

「・・・」

そないに怒らんでも。
却って外装とギャップがあって、お洒落かもよ~~。

「・・・ヴィラってのを絡めるのは??」

ヴィラ、ねえ~~。

「例えば・・・そう・・・ギリシャヴィラ・・・とか」

はあ??それこそラブホと間違われない??と言って、また睨まれる。

「・・・メゾンを絡めるのがいいかなあ」

あーメゾンねえ。
貴方の名字をとって高橋メゾン・・・まあ、無難なんじゃない??

「いや、それだと、個性がないでしょ。」

う~~ん・・・別にそこに個性を打ち出さずとも。
そう言ったのだけれども、彼はやっぱり拘りたいのだった。

「なにがいいかなあ~~・・・・」

・・・だから名字をとって高橋メゾンでいいじゃんって!

「ダメですよ。俺のアパートなんだから。」

ハイハイ。
じゃあ、あんたが好きなものの名前でも絡めれば??

「・・・そうですよね!!!じゃあ、・・・DOGメゾン」

いやいや、住むの人間でしょ?

「・・・う~~ん、じゃあ・・・・・」

何か好きなものないの??

「・・・あ、モズク!!!」

飲みに行った時、必ず頼むのは知っているけど、モズクメゾンって・・・!!!

「・・・いや、良くないっすか??個性的で。」

・・・個性ってのは、そういうことを言うんじゃないと思う。


結論を言えば、お嫁さんの御実家に「モズクメゾン」は却下され
無難に名字をとってメゾン高橋に落ち着いたらしい。

そしてその後、豪華な結婚式をあげた2人は結局別れて
メゾン高橋も今は、ない。

そうして、わたくしは、今になって、
この広い世の中
薄いピンクの壁のおされな外装の「モズクメゾン」
あっても、良かったような気もする。

するのだ。

モズクメゾン
空き室あり。
美室。
日当たり良好。

モズク好き、優先。