現役引退を発表した、町田樹というフ... by 華子 | ShortNote

現役引退を発表した、町田樹というフィギュアスケーターの狂おしいほどの魅力について、語りたい。
わたしがどうして、この男のスケートを、狂おしいほどに愛しているのか。
その話を、どうか、聞いてくれないか。


町田樹が、フィギュア界で存在感を強く現し始めたのは、
2012年のグランプリシリーズ中国杯で優勝したあたりからでした。
すでに長く活躍してきた選手ではあったけれども、
遂に世界レベルで覚醒するのかと期待され始めた矢先、
2012年の全日本選手権で、まさかの惨敗。

翌年のソチ冬季オリンピックの代表選出を控えたこの時期において、
町田さんは、
「オリンピック候補の選手6名のうち、第6番目の男」
つまり、候補ではあるけれど、最下位、もっとも可能性の低い男だと、
周囲からも、そして自身でも、認識されていました。

しかし、2012年全日本での惨敗を経験して、
ほんとうに、もう、自分のすべてを捧げて、本気でオリンピックを目指すのだ。
と、彼は決意します。
そして、2013年春、決意の証として、頭を丸めて、坊主にします。

(※ここで、坊主という、ある種の奇行に走ってしまうのが町田クオリティ)
(※フィギュアスケーターなのにそんな髪型でいいのか!? と、トレーナーに心配されたという逸話も、マジ町田感はんぱない)

そして、2013年に自身が演じるプログラムとして、「エデンの東」を選択。
スタインベック著のこの小説に登場するキーワード、「ティムシェル」を、
2013年における自身のスケートのテーマとして掲げます。

「ティムシェル」とは、ヘブライ語で、「汝、治むることを能う」という意味の言葉。
その解釈はさまざまですが、町田さんは、
「自分の運命は自分で切り開く」という意味だと解釈。
この「エデンの東」というプログラムを通じて、「ティムシェル」を体現すると宣言し、
2013年、つまり、オリンピックの出場をかけたシーズンが始まりました。

その後は、宣言通りの、すさまじいまでの快進撃。
グランプリシリーズアメリカ杯、優勝。
グランプリシリーズロステレ杯、優勝。
グランプリファイナル進出。
オリンピック代表選考会を兼ねた、2013年全日本選手権で、2位の銀メダル獲得。

そして、全日本選手権終了直後の、オリンピック代表発表で、
その名を呼ばれ、ついに、ソチオリンピックの出場の切符を手に入れたのです。

ほんの10ヶ月前まで、「第六番目の男」と呼ばれていた彼が。
「自分の運命は自分で切り開く」という決意を込めたショートプログラム、
「エデンの東」を滑り続けることで。
ほんとうに、自らの力で、自分の運命を切り開いていきました。

その後、ソチ五輪では、5位入賞。
そして、フィギュアスケート界では、オリンピック以上に厳しく価値の高い試合とされる、
世界選手権に、日本代表として初めて選出されます。

その大舞台で。

彼は、「エデンの東」を、まったく減点の仕様がない、完璧な演技で、すべりきってみせました。

これが、そのときの映像です。





(これはドイツ語解説の映像ですが、興奮しすぎの実況の臨場感が良い。笑)
(日本語の解説では、「日本フィギュアスケート史上に残る名作」と称されていました)

「自分の運命は自分で切り開く」。
そのテーマを体現すると公言し、その言葉通り、オリンピックにも出場を果たした男が、
シーズンラストの試合である世界選手権で、
このプログラムを、遂に、遂に、完成させたのです。


これが……!

これが、ティムシェル……!!


ティムシェルを完成させた町田さんは、この試合で、
一位と0.33点差という歴史的大接戦で、二位の銀メダルを獲得。
羽生結弦選手に次ぐ、世界第2位のスケーターとなったのでした。


町田樹というスケーターの魅力は、
たとえば、ジャンプの安定感を始めとする技術力の高さや、
指先まで完璧に行き届いたアーティスティックな表現力、
バレエとフィギュアスケートを高いレベルで融合させることに成功した数少ない選手と称されるほどの、ダンサーとしてのレベルの高さ、
世界中の解説者がこぞって絶賛する姿勢の美しさ、
などなど、いくらでも挙げられますが、
わたしが、彼を狂おしいほどに好きだと感じる最大の理由はやはり、
己の生き様を通して「ティムシェル」を体現して見せてくれたという、
この、事実。


今、思えば、「エデンの東」を結実させた2014年3月の世界選手権で、
町田樹という競技者は、既に完成を見ていたのです。
実際、町田さんは、ソチ五輪の前から、ソチを最後に引退するという旨も、
発言なさっていました。

だから、2014年も競技を続けると発表があったとき、
わたしは、ほっとしたと同時に、
「どういうことだろう?」
「オリンピックを経験して、気持ちが変わったということだろうか?」
と、なんだかふわふわした疑問も感じていました。

その疑問が、今回の引退にあたって、
関西大学を通じて発表された町田さんのコメントで、
すんなりと、解消されました

http://www.kansai-u.ac.jp/sports/message/machida/2014/12/post_26.html

「去る2014年2月のソチ五輪出場に際し、関西大学を通じて多くの皆さまより賜りました活動支援金等のご芳情にも、改めてこの場で御礼申し上げます。皆さまへの、私なりの御礼の気持ちの一端としても、今シーズンの二つのプログラムを制作し、演じてきたつもりです。」

あぁ……そうか。
五輪出場、そして世界選手権での「エデンの東」完成で、
競技者としての町田樹は、もう完成していたのだけれども。
それを支えてくれた周囲へのお礼として。
言う慣れば、お礼参りのような意味合いで、
今季、もう1シーズン、滑ることにしたのだと。
つまり、今季は、ボーナストラックのようなものだったのだと。

深く、腑に落ちた心地がしました。

メディアでは、「町田語録」なんていって、
彼の独特な言い回しや世界観が、強く取り沙汰されているけれども。
もちろん、それも彼の魅力のひとつで、わたしも(わりとネタ的な意味でも)大好きなんだけれども。
そこまでの世界観を持ったフィギュアスケーターは、少なくとも日本には、
今まではいなかったし、もしかしたら、今後も、もう出てこないかもしれない。
だからこそ、わたしは、町田樹を、狂おしいほど好きだと感じたのだけれども。

町田さんは、「町田にできたんだから、自分にだってできる、と思ってほしい」
という旨の発言をされています。
「ティムシェル」の日本語訳である「汝、治むることを能う」は、
直訳するならば、「叶えることを、自分で可能にする」。
つまり、「わたしは、夢を叶えていい」「成功してもいい」「しあわせになってもいい」
と、自分で自分にOKを出す、という意味としても、捉えることができます。

「自分にだってできる」って、まさに、ティムシェル。

町田さんは、競技者としての人生を自分で切り拓き、
さらに、競技者の次の人生を、やはり自分で切り拓いた。

町田さんがやったんだから、わたしも、やってもいいのだ。
やりたいことを。夢を。未来を。叶えてもいいのだ。
それが、「自分の運命は自分で切り開く」――ティムシェル、ということなのだと、
彼が、教えてくれたのだから。

次の人生の目標が、既に明確に定まっている町田さんの、
その用意周到なところも、マジ町田、としかいいようがないです。
ああ……もう愛してるよ、愛してるよ町田! 狂おしいほどに! すきだよ! すきだよ町田アアアアア!!!!!!!!!!あいしてるよぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!!!!!

町田樹という存在を、いつでも、どこまでも、応援しつづけます。


町田さんの未来に、光あれ!