任天堂の未来を左右する戦略タイトル「スプラトゥーン」とは何者か

今日(2017年7月21日)は「スプラトゥーン2」の発売日。
数日前、ビックカメラのとある店舗を覗いてみたところ「スプラトゥーン2は先着順、一人一個まで」という張り紙が貼られていた。人気のほどが伺える。
「スプラトゥーン2」、実は「マリオ」シリーズにまさるとも劣らない、超大型タイトルである。
任天堂のゲーム機「Switch」はもちろん、任天堂のゲーム戦略そのものを左右するほど、重要なタイトルと言って差し支えないだろう。
なぜスプラトゥーン2がそれほど重要で、戦略タイトルであるかを、つらつら書いてみる。

スプラトゥーンとは何か

* スプラトゥーンは、任天堂が開発・販売するゲームソフト
* 1作目は「Wii U」専用タイトルとして。2015年5月28日に発売
* ジャンルは「アクションシューティング・対戦アクション」
1作目の紹介映像はコチラ
2作目の紹介映像はコチラ
スプラトゥーンを遊んだことがない人に、「スプラトゥーンがどんなゲームか」を説明するのは難しい。
「バーチャルなサバイバルゲーム」
「ファストパーソンシューティング(FPS)ながら囲碁のような陣取りの戦略性がある」
という表現が近いと思うが、まだ足りない気がする。
スプラトゥーンでは、インターネットでつながっているオンライン上のプレイヤー同士が、ランダムに 4 vs 4 に別れてチーム戦を行う。このチーム戦が最高に楽しい。
一人で遊ぶモードもあるが、オンライン戦の方が何十倍も楽しい。一人モードは、いわばオンライン対戦を楽しむための練習ステージのような位置づけになっている。
とにかく、一度遊び始めたら、なかなか抜け出せないゲームなのだ。
自分はもともとゲーム会社で働いていて、随分いろいろなゲームを遊んできた。
家庭ができ、50近い年齢になって、ゲームにのめり込むこともあまりなくなっていた。
そんな自分がドハマリして、時間が立つのを忘れて遊んでしまう、それほどのパワーがあるゲームなのだ。

数字で見るスプラトゥーン

個人的な感想をいくら言葉にしたところで、スプラトゥーンのすごさは伝わらないと思う。そこで、数字を使って、スプラトゥーンの驚異的なパワーを説明したい。
最初に、Wii Uの出荷台数、そしてWii U でヒットした上位3作の出荷本数をグラフで紹介する。
数字の出典はWikipedia。最初のグラフは、全世界の出荷本数(台数)である。
Wii U の出荷台数は、全世界で1356万台と言われている。Wii Uで最も売れたタイトルは「マリオカード8」で、831万本。実にWii U を持つ3人中2人が持っていることになる。
次に出荷本数が多いのは「スーパーマリオブラザーズ U」で、534万本。
そして3位が、なんと「スプラトゥーン」。480万本の出荷と伝えられている。
新規のゲームタイトルながら、いきなりマリオに匹敵する出荷本数を達成してしまっているのだ。
日本国内の数字を見ると、さらに驚く結果となる。
Wii U の国内出荷台数は321万台と言われている。
スプラトゥーンの出荷本数は149万本。Wii U を持つ2人弱に一人が持っていることになる。
その一方、スーパーマリオブラザーズUが125万本、マリオカート8が55万本と記録されている。
スプラトゥーンは、日本ではマリオシリーズの2作品を抑えて、Wii U で最も売れたタイトルであることがわかる。
これは「驚異的な数字」だ。なぜなら、これまで任天堂の据え置き型ゲーム機で、まったく新規のタイトルが「マリオ」シリーズを超えたことなどなかったからだ。
ここで歴代の任天堂の据え置き型ゲーム機と、各プラットフォームごとの売上トップ3ソフトを見てみよう。(数字はいずれも日本国内、引用元:http://entamedata.web.fc2.com/hobby/game_rank_hard.html)
ファミコン
1位 スーパーマリオブラザーズ(681万本)
2位 スーパーマリオブラザーズ3(384万本)
3位 ドラゴンクエストIII そして伝説へ… (380万本)
スーパーファミコン
1位 スーパーマリオカート(382万本)
2位 スーパーマリオワールド(355万本)
3位 ドラゴンクエストVI 幻の大地 (322万本)
ニンテンドー64
1位 マリオカート64(224万本)
2位 ニンテンドウオールスター!大乱闘スマッシュブラザーズ (197万本)
3位 スーパーマリオ64(192万本)
ゲームキューブ
1位 大乱闘スマッシュブラザーズDX (151万本)
2位 マリオパーティ4(90.2万本)
3位 マリオカート ダブルダッシュ!! (82.5万本)
Wii
1位 NewスーパーマリオブラザーズWii (462万本)
2位 Wiiスポーツ (379万本)
3位 マリオカートWii (375万本)
ご覧いただくとわかるように、任天堂の歴代据え置き型ゲーム機で最も売れたタイトルは、ほぼすべてマリオシリーズだ。唯一、ゲームキューブだけが異なるが、「スマブラ」のメインキャラクターはマリオである。また、「スマブラ」は任天堂のゲームキャラクター総登場するゲームであり、ニンテンドー64ですでに発売されているタイトルのアレンジバージョンで、全くの新規タイトルではない。
唯一「スプラトゥーン」だけが、まったくの新規タイトル・キャラクターであるにも関わらず、マリオシリーズを凌駕しているのだ。
これはファミコンから始まった30年に渡る任天堂のゲーム機史上で、初めてのことだ。
30年間で唯一、マリオシリーズを凌駕したソフト、といえば、どれだけスプラトゥーンが驚異的なのかがわかると思う。

任天堂が考えるネットワーク戦略のキラータイトル

スプラトゥーンを考える上で、欠かせないのが「オンライン型のゲーム」であるということ。
先述の通り、スプラトゥーンには一人遊びのためのモードもあるが、位置づけとしては「オンライン対戦のための練習モード」であり、ゲームの本質はオンライン対戦にある。任天堂の据え置き型タイトルの中では異例である。
任天堂は2018年から「Nintendo Switch Online」という、ネットワークサービスを有料で提供することになっている。
マリオカートやスプラトゥーン2などを使ってネットワーク対戦を遊ぶ場合、月額数百円を支払って、Nintendo Switch Online を利用する形になる。
従来の任天堂は、ゲームハードやソフトを売り切る、いわゆるパッケージ売り切り型のビジネスモデルだった。Switchでは、売り切りモデルに加えて、ゲームを遊ぶユーザーから月額でお金をもらう、いわゆる「ストック型」のビジネスモデルを立ち上げようとしている事がわかる。
すでに説明したとおり、スプラトゥーン2はオンライン対戦がメインのモードであり、世界中で何百万人ものプレイヤーがオンライン対戦を楽しんでいる。
スプラトゥーン2は、任天堂が立ち上げようとしているストック型のビジネスモデルを一気に普及させる、起爆剤としての役割を持つ、強力なキラータイトルなのだ。

スプラトゥーンがもたらすゲーム発信型のカルチャー

スプラトゥーンは、ゲーム以外にも各所に影響を与えて、ゲーム発信型のカルチャーを作り始めている。
その一つが、ゲーム内に登場するキャラクター「シオカラーズ」だ。
シオカラーズはゲーム内の人気キャラクターであり、独自ライブまで開催されている。
ライブ映像を見ると、登場するキャラクターに合わせて、観客がサイリウムの色を替えながら声援を送っているのがわかる。この映像からは、単に「スプラトゥーンというゲームが好き」というレベルにとどまらず、「シオカラーズ」という2人の個性が好きで、それぞれを応援したいというファンの熱気が伝わってくる。
バーチャルなキャラクターのライブで、ここまでもあり上がるのは、初音ミク以来といって良いだろう。
シオカラーズの曲は、なんとカラオケの曲としても収録されている。
ゲームのBGMの1曲が、カラオケサービスに提供されるのは、異例中の異例だ。
e-Sportsのプロチームが「スプラトゥーン2」部門を設立した、というニュースも飛び込んできている。
スプラトゥーン2のプロゲーマーが誕生するまでになっているのだ。
「マリオ」は、ゲームにとどまらない世界的なキャラクターとなっていて、キャラクターグッズやアミューズメント施設まで、ゲームから発信される独自のカルチャーを形作っている。
スプラトゥーンは、マリオに続く、強力なゲーム発信型のカルチャーを作り始めていると言って良いだろう。

スプラトゥーン前、スプラトゥーン後

任天堂を長年ウオッチしている、老舗のブログ「N-Style」では、スプラトゥーンを指してこう表現している。
Splatoonは、岩田前社長が最後に残した遺産であると同時に、ポスト岩田体制のスタートを象徴するソフトでもある。今後、任天堂の歴史を語る上で「Splatoon以前」「Splatoon以後」と分けられるぐらいのタイトルだと思っている
エンターテインメント業界の一寸先は闇だ。だれも正確な予想はできない。
少なくない金額をその会社に投資している株主としても、任天堂の未来は輝かしいものであってほしい。Splatoonは任天堂が目指す未来に、成功の光を見せてくれた。Splatoonがゲーム業界の常識を塗り替え、任天堂がこのナワバリバトルを制することを祈りながら、私は今日もイカの世界に飛び込む。
長年、任天堂を見ているブロガーをして、こう言わしめるほどの魅力が、スプラトゥーンにはある。
自分もスプラトゥーン2を予約して、プレイすることを楽しみにしているイカの一人だ。
Wii U のスプラトゥーンでは、ウデマエが S70 まで上がったが、残念ながらS+には到達できず、自分の子供に勝つことができなかった。
スプラトゥーン2では、今度こそウエマデを最高まであげ、子どもたちを追い越したい。
そしてもう一台 Switch を買って、子どもたちと2人チームを作って、オンライン対戦をしたい。
スプラトゥーンには、「1人1台、Switchがほしい!」と思わせるほどの魔力があるのだ。