ぐつぐつぐつぐつ今日も煮込む

私は野菜が嫌いだ。
子供の頃野菜を食べろと食卓に並ぶ野菜はシャキシャキの歯応えと辛さ臭さが残る玉葱の野菜炒めや、煮すぎて臭みが出ている人参、そしてやっぱりシャキシャキの歯応えと青臭さがある葉物が中心だった。
シャキっという音と共に鼻を通る臭みがどうにも苦手で、食べ終わった後もしばらく残り続ける臭いにも顔を顰めてしまう。
しかし野菜は栄養の宝庫なのだ。
カルシウム、カリウム、鉄、ビタミン、食物繊維。
不足しがちな栄養素をサプリメントで補うことが当たり前のようになっている世の中だけれど、野菜を食べれば補えるものなのだ。
20代も半ばを過ぎると途端に不規則な食生活で体調を崩すことが多くなった。
低血圧、低体温は当たり前。
そこに貧血も加わり、基本的に体調不良がデフォルトのような人間だった。
その時、1冊の本と出会った。
それは料理本だけれど細かい指示は一切なし。
食材が書いてあり、それをどう調理するか。
煮る、焼く、炒める、蒸す。
大まかに言えばこれだけが書いてある。
すごく気楽だ、と思った。
元々レシピを見ながらきっちりと作ることが苦手な私は、食材を自分の食べたいように調理して好きなように食べていた。
その本を読んだ時に「こういう本が欲しかった!」と深く頷き、勝手に意気投合したような気がした。
その本は自分と同じように好き勝手作っている様子が見て取れる。しかし料理の基本は抑えているから勉強になる。そして、塩加減や味付けは自分の好きなようにやっちゃって、といった具合が一番気に入っている。
その本に書いてあったのだ、野菜を煮込んだ鍋の上でトマトをすりおろせばトマトスープの出来上がり、と。
トマトスープのレシピにはいつもカットトマト缶やトマトピューレが材料に書かれている。
缶に入っている分量は決まっている。
1缶開けるとそれに合わせた量で作らなくてはいけない。
どうしても量が多くなるし、かと言って余らせても、2日連続トマト味では飽きてしまうので結局余らせて終わりだったりする。
もちろんスープ以外にも使い道はあるが、結局はトマト味に変わりはないのだ。
なので缶を使うのも面倒だなと思っていたところに、そんな事が書いてあったから、まさに目から鱗だ。
すごくいい。
すごく楽だ。
そしてもう一つ気付いたことがある。
シャキシャキの歯応えが嫌いなら煮込んでしまえば問題ないのでは……。
白菜やキャベツ、人参、ジャガイモ、ほうれん草やブロッコリー様々な野菜をぐつぐつ煮込む。小松菜だって食べられるようになった。
しかし、どうしても譲れないことがひとつだけ……。
そのために私は毎回一手間掛けている。
いろいろな野菜をたっぷりいれて煮込むのと同時進行で玉葱だけはフライパンに入れ柔らかくなるまで蒸し焼きにしている。
そして全ての食材が鍋の中に入ったら、その上でトマトをすり下ろすのだ。
塩で味を整えれば野菜たっぷりのトマトスープの出来上がり。
トマトを豆乳に変えても美味しい。
ただの塩だけでも、野菜の旨味がスープに溶け込んでいるので味わい深い塩スープになる。
最初にダシを取り、味噌で仕上げれば味噌汁だ。
どんな野菜でもぐつぐつ煮込めば食べにくいことはない。
野菜嫌いでも毎日たっぷりの野菜を摂ることができる。
温かいスープなら身体の芯からほかほかだ。
いいこと尽くしの野菜スープ。
野菜嫌いにこそおすすめの食べ物だ。
野菜嫌いの私は今日もぐつぐつぐつぐつ野菜を煮込む。