新章開設・ミステリーツアー“恩返し?”

これは行きつけのスナックで友人と呑んでいた時に彼から聴いた話だ。友人は地方の出身で今でも里帰りをしてはある神社に必ず寄るという。
そこで体験した話を文字起こしする。
小学校に入った友人はよく家の近くにある神社で夕方まで遊んでいることが多かったのだが、ある日神社で6年生の子何人かが集まっていて、棒でポカポカ叩いている。不思議に思い友人が覗き込むと一匹の蛇がいた。その蛇は棒で叩かれたらしく弱っていたので友人は勇気を振り絞り、彼らを止めた。彼らはつまらなくなったのか諦めて何処かに行ってしまった。
よく見るとその蛇は真っ白でまだ小さかったのだが、友人は蛇を逃してあげた。蛇は神社に植えてあった太い木をスルスルー、っと登り上の枝辺りで見えなくなった。その時、一筋の風がビュー!と吹いた途端に女の子らしい声が聞こえてきた。

女の子?『どうも有難う…』

彼の周りには誰もいない、見渡しても人影すら無い…信じられない話だが、多分助けた蛇がお礼を言ったらしい…そんな風に聞こえたんだ、と勝手に思いながらも家に帰った。
そんなことがあったのをすっかり忘れていた彼は神社で遊び続けていたのだが…。
翌年の夏休みのある日、彼は近所の子何人かと遊んでいたところ、白いワンピースを着た女の子が立っていた。彼女はどちらかというと小柄で、何となく色白な感じの子だった。
ただ彼女は一言も喋らず、ニコニコして立っていたのが彼は気になりだしていて、声を掛けた。

友人『あれ?見かけない子だね、引っ越してきたの?だったら俺達と遊ばない?』
女の子『うん!』

彼女は“月子”と名乗った。最近引っ越して来たのでまだ友達もいないと言う。友人は来る者拒まずなタイプだったので月子を招き入れた。
当時今みたいなテレビゲームなんて無い時代だったからもっぱら外で遊ぶというのが主流だったので虫取りや近くを流れる川で魚釣とかをして遊んでいた。驚いたことに月子は虫や魚が集まる場所を良く知っていたのでいつも虫かごやバケツはカブトムシやクワガタ、魚がいっぱいだった。とにかく夏休みは毎日毎日川や森とかに出かけてはよく遊んでいた。月子は木登りがすごく上手く、スルスルと登ってしまうのには友人も驚いたという。
そんな夏休みの最後の日、友人宅では季節外れの転勤が決まった。彼は月子に引っ越すことを話した。

友人『実はさ、俺ん家引っ越すんだ。月ちゃん(月子のこと)と遊ぶのは今日が最後なんだよ。でもね、何年かしたらまた戻って来るらしいからまた遊ぼうよ。』
月子『うん!』
友人『いつも俺と遊んでくれて楽しかった!どうも有難う!』
月子『うん!』

それから月日はたち、高校生になっていた彼は時々ここに帰って来ては神社に寄るのだが、月子とは会えなかった。まあ、友人も段々と月子のことを忘れて来てはいたのだが…
いよいよ帰るという日の夕方ふと彼は神社に寄ってみた。賽銭を入れパンパンと柏手をし、鳥居を抜けようとしたその時、また一筋の風が吹いた。埃が凄かったので目を思わず瞑ってしまったのだが、目を擦ると右脚に何か違和感を感じ脚を見ると蛇の抜け殻が巻きついていた。今、脱皮した感じの抜け殻でうっすら白かった…突然のことで驚いてしまった彼の声を聞いた神社の神主さんが慌てて社務所から出てきた。

神主『どうしました?』
友人『脚に蛇の抜け殻が巻きついてて驚いちゃったんですよ、すみません…』
神主『なるほど…これは確かに蛇の抜け殻ですね、しかも新しい!神様の使いの蛇の抜け殻って貴重なんですよ。財布に入れておくと厄除の道具にもなるし…それ、私にくれませんかね?』
友人『勿論構いませんよ。』

と、神主さんに抜け殻を渡した。神主さんは社務所からハサミを持ってきて、抜け殻の一部を友人にくれた。
家に着いた時にはもう夜になっていた。
そんなことも忘れてまた月日が経ち、大学生になっていた友人はある日大学の同級生と一緒に海出かけていた。遊び疲れた友人達は運転する人には悪いが車の中で寝ていた。その時、友人は月子の夢を見た。夢の中の月子はかなりスラッとしてスタイルの良い女性になっていたが白のワンピース姿はあの時遊んだ時と同じだった。ただ彼女はあの時のように無邪気に笑ってはいなくて、神妙な表情で友人に叫んでいる。友人には彼女の声がわからなかったのだが…
彼女は自分の声が聞こえていないと理解すると映像を出してきた。
そこには血だらけになってグッタリしている運転手と、後部座席に座っていた大学の同級生が道路で倒れている姿…交差点に侵入した自分達の車に信号無視した右側道路から進入してきた車が横から接触、車が横転しながらゴロゴロと転がっている様子だ。それを忠告している大人の月子が叫んでいるのだ。
友人はふと目が覚め、運転手に言った。

友人『あのさ、運転させておきながら寝ちゃった俺が言うのもなんだけどさ、安全運転してよ。』
運転手『あぁ、大丈夫!寝てて平気だよ!俺も疲れてるし、人乗せてるからスピード出せないよ。』
友人『そうだよな、ごめんごめん!運転させておいて変なこと言って。お言葉に甘えてちょっとだけ…』

…と、また眠りについた。
どのくらい寝ていたんだろう…目が覚めるとピッ…ピッ…という機械音で目が開いた。周りには医者や看護師がいる。病院にいるんだと友人は理解した。
看護師さんに話を聞くと、交差点に入ったら右から車が交差点に入って来て右側に追突、その勢いで車が横転したんだそう。シートベルトをしていた友人は右足を骨折しただけで済んだが、運転手と後部座席に座っていた二人は何故かシートベルトをしていなかったので外に投げ出され…ということだった。
そういえばあの時夢に誰かがいて叫んでいたな…白のワンピースを着た…?まさか月子が教えてくれていたんだ!と月子に助けられたんだ!と思った。月子は事故に遭うって言っていたんだ、月子に助けて貰ったんだ!と。あの時疲れてるから近くのコンビニで休憩しようよ、と言えば良かった…と後悔した。
それ以来、月子が夢に出てくる時は決まってアクシデントに遭っていた友人はトラブルを回避していた。
そんなある日友人は一人で出かけたのだが、駅の駅員さんに声をかけられた。
駅員『あの…お客さん。背中に鳥のフンがついてますよ。脱いで落としていった方が良いですよ。』

友人『(上着を脱いで)うわっ、ホントだ…結構目立つなぁ…』

近くのコンビニに行きトイレで汚れを落としていたところ駅が騒がしい。先程の駅員に様子を聞くと…

駅員『先程出発した列車、脱線事故を起こしたんですよ!』

友人はゾッとした。月子の夢は見なかったはず…だけど月子は事故を予測していたが間に合わなくて服を汚してわざと電車に乗らせなかったんだ!と思った。駅の構内放送が騒がしい…死傷者もいるとかいないとか。ネットやテレビでもその事故のことをやっていた。
月子は昔いじめられていた白い蛇だったんだ、トラブル回避をすることが彼女なりの恩返しだったんだとようやく気がついた。友人はあの神社に行き、月子に守られていることを感謝した。
不思議な経験をした友人は神社の神主さんを訪ね、助けた白い蛇のこと、助けてから月子という女の子と関わってから彼女が夢に出てきてトラブルを教えてくれること…全てを話した。

神主『あの時抜け殻を貰いましたよね?実は私…知ってましたよ。貴方に白い蛇が巻きついていること、月子という蛇が貴方を守ってくれてるのは彼女なりの恩返しでしょうね。ただ彼女、時々自分のことを忘れちゃうのは怒っているみたいですよ(笑)』

と。
ただ友人は未だに彼女もいないし、結婚とかにも縁が無い。雰囲気が良くなっても相手とは音信不通になったり、自然消滅したり…良いことばっかりで無い、友人(笑)月子のヤキモチ?