聖夜と新年の境い目

ホテルで営業企画の仕事をしていたころ、12月25日の夜は、ある意味“戦争”だった。
ホテルというのは、季節感というか季節のイベントを取り込むことを義務づけられたような施設である。
クリスマス間近となればそれらしい、新年まであとわずかとなればそれらしい、そんな振る舞いと装いが求められる。
12月25日の夜は、ホテルがクリスマスモードから新年モードに生まれ変わる夜なのだ。
まず、クリスマス関連のイベントが終了次第(だいたい21~22時ころ)、館内あちこちの関連ディスプレイが一斉に撤去され始める。
その終了と相前後して、新年に向けた門松やら鏡餅やらが設置される。
鏡餅とひとことで言っても、サ◯ウの真空パックみたいなのではない。
本物の餅を重ね、伊勢海老やら干し柿やら裏白やら飾り扇やらフル装備のヤツである。
これが館内十数か所に配布される。
崩れやすく繊細なので、ひとつひとつ人の手で運ばれる。
おまけに人手不足なので、2~3人で手分けして1人あたり4~6か所に手持ち運びする。
すべてのディスプレイの変更が確認できたら終了。
だいたい日が明けて26日になっている。
そして翌朝からは昨日までのことが嘘のように、新年を踏まえた出で立ちでお客様をお迎えする。
ホテル業の、こうした変わり身の早さと、そうした“早変わり”に命を懸けているところ、そしてそんなことをお客様の前ではおくびにも出さないようなところが、じつは好きだった。
12月25日の夜を迎えるたび、そんなことを思い出す。