昨夜に出逢えて



感じる秋の向こう側さえ
朧げに見えてくるような


そんな風が
僅かに朱の色に染まる空の縁と
月を覆う雲の間から
穏やかに吹いてくる


地に着いている筈の両の脚から
少しずつ力を抜かれるような光が
ゆっくりと色を変える空の一点から
それを感じる人の真ん中に
沁み入るように注いでいる


擦れて軋んで弾けて響く
街のどこかで生まれる音と
街のどこかに消えゆく音


昼夜の区別無く
表からは隠した裏側で
そんな世界に身を浸す


語らなくてもいい
そして知らなくてもいい


月齢は曇天の向こう側でも
周期的にその姿を隠しては現すから
見上げたその時々で
仰いで想えばいい


きっとまた
景色を溶かす雨が降る


きっとまた
色褪せる葉相を照らす陽も昇る


家路を歩みふと見上げた空
ほんの少し震える指先で
秋の扉に触れたなら


薄っすらと浮かぶ月に
出逢えた中秋の夜