🥺ぴえんもたけなわプリンセス🥺

私は以前、舞台役者をやっていた。
とはいえ、夢半ばどころか、夢の入り口あたりで引き返してしまったのだが……。
今日は私が役者をしていた頃の、少々やるせない思い出を綴りたいと思う。
***
もう十年ほど前のことである。
当時は第一次タピオカブームがひっそりと息を潜め、「使い勝手が悪そうだ、こんなもの流行らないだろう」と思っていたiPhoneが普及していく最中だった。
「ぴえん🥺」のぴの字もない頃であったが、そうとしか言い表せない表情をしてしまっていたことがあった。
あれはまさしく、ぴえんであった。
***
私はモデルやアイドルといった美少女たちに囲まれ、舞台に立っていた。
どういうわけかオーディションに受かってしまったのである。
出演者たちの中で事務所に所属していないのは私だけで、それ故かずば抜けて垢抜けていないのも私であった。
事件は、公演前日のリハーサルで起こった。
「ありがとうございましたー!」
客席に向かって、満開の笑顔を振りまく私たち。
カーテンコールの練習だ。
その日はビデオ撮影も行われており、私も全身全霊の笑顔をカメラにぶつけた。
「ちょっと待って。」
突然の監督の声。
空気がピリつく。
「テセル。あのさ…」
私………?
一体何をしでかしてしまったのだろう。
心臓がバクバクと音を立て、嫌な汗が滲む。
「テセルは笑うと目が無くなるから、お前だけカーテンコールの時笑わないでくれる?」
…………はい…。
私は目が小さい。
それに加えて、周りは目が大きな美少女達なわけで………悪目立ちしてしまうのは当然と言えば当然であった。
「よし!じゃあカーテンコールだけもう一度やり直して〜!」
カメラが回る。
後日映像を確認すると………

ぴえん

🥺

な顔をした私の姿が、映っていた。