言いたくない女子校生のヒミツ

氷が恋しい💦こんな日にはX'mas(正しくはXmas)の宝箱から一つ取り出して、
絶対忘れられない思い出を……。

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振り止まない雪はまた深く積もったようだ。
忍ぶように走るバスは、固唾をのんでいた。

小さいトンネルを越えると下りなのにわざとスピードを落としたように思う。
咳払い一つ聞こえない。
”不意を突かれた者が瞬間立ち止まる”――そんな時間。
タイムストップ。 

前日からの雪で道が凍結してるのかもしれない。
クリスマスに雪がこんなに降るのは久し振り。
   (ネットよりイラスト拝借)
ひと言も聞き漏らすまいと、もうさっきから誰もじゃべらない。
トンネルに入った頃からだろうか、女子高生の二人がクリスマスの家族の過ごし方について互いの話を始めた。

立ってるほうの女子高生が「MIWAのとこはいつから飾り付け、始めんの―」
制服の袖から少しのぞいたシャツはまだ洗いたてのように白い。 

「昨日からそろそろやってる。今日お母さんと買い足しに行くねん。YUKAのとこは?」
揃えた膝の上にはクマの飾りが一つだけ付いた薄めのカバンを真っ直ぐ置いている。
二人ともごく普通のおとなしいタイプの女子校生のよう。
「お母さんと弟が二人でボチボチ頑張ってる。早よプレゼント考えんと間に合わへん」 

「まだなん?今日くらいからすごい込むでえ。お父さんは先週買い終わってるみたい」

「お父さんチカラ入ってんねんなあ」 💪
自然にあごを引いて背筋を伸ばした姿勢でお勉強もできそう。 

「YUKAのとこのお父さんは?一緒にやってくれはんの?」

つま先を揃えて立つ癖があるのだろう、かかとを上げ下げしながら
「以前は全然知らんぷりやったんやけど3年くらい前から、急にやる気出さはってん」 

「ええやん。よかったなあ。」 

「毎年2日くらい前から……」 

「……」 

「ダルマを用意し始めはんねん」 

「…… ……ふ、ふ~ん」 

この会話あたりから車内の誰も無口になった。

ダルマ……達磨……だるまさん!  
???????   !!!!!! 
「へえ~、そうなんや」
短く切った髪が小刻みに揺れるのは、何かを堪えているせいなのか。
「ほんでそのダルマはツリーのどこに置くのん

(ソウダ!いい質問だ!真ん中をついている……。トンネルを抜け下りに入ると目的の
 停留所まですぐなのだ。置く場所だけでも早く言ってくれ。降りるに降りられない!
 それよりダルマって…なんじゃ! なんでダルマや!) 

多分乗客の誰もが同じツッコミを入れただろう。
だから静かに次の言葉を、待つ。… 待つ。… 待つ。 

「ツリーの飾りつけとは違うねん。」 

(ほほう…)(何で使うんや…)(魔除けか…)(サンタの代わりちゃうの)
            ?????
サンタを達磨と呼ばせる教育方針なのか?

「お正月になったら目とか口とか付けて、大きな雪だるまにしたいらしいねん」 
 
  💛 💛 💛 💛 💛 

「そうなんや」を、きっかけに車内、無言でもわかる――大ウケ! 

到着した次の停留所でいつもより多めの乗客と私が降りた。
降りしきる雪は止まず襟を立てながら、ひと言も交わさず、でも満足げな顔。
同様の想いを抱えてそれぞれの方角へと帰っていくのでした。 

一駅乗り過ごした人もいるに違いない
    メリーXmas !