君は嘘つき

高校生3年生の頃、私は文化祭実行委員だった。
文化祭実行委員会は各クラス男女1ペアが選任される。片方の女子(以下Uさん)は名前は聞いたことがあるが今まで交流のない人だった。
静かで、よく難しそうな本を読んでいる人。クラスに1人はいるタイプの女子だ。
「おばけ屋敷」と言う良くある文化祭のテーマが決まった日、私たち実行委員はクラスに残り、人員配置など詳細な内容を決めることにした。
私とUさん以外、教室には誰もいない。やはり男女がこのような状況にいるのは気まずいものである。今まで交流のなかった人なら尚更のことだ。
おばけ屋敷…おばけ…ホラー……
ふと、ホラーつながりでこんなことを話してみた。
「Uさん、日本では怪談で涼むと思うけど、寒い地方の国では身体を暖めるために話してるって知ってる?」
「え、知らなかった、なんで?」
「寒い地方は怪談を話してより震えを強くして身体を暖められるからそうだよ」
「なるほど!確かににそうだね」
読書が多い人は好奇心が旺盛、とよく聞くが、まさにその通りだ。怪談と言う自分とは離れたテーマでも、意外性を与える内容だと食いつきがいい。
「まあ、嘘なんだけどね」
加えてこのセリフを言う。
やられた、と言う少し目を見開いた彼女の表情。次いで、少しムスッとしながら
「君は嘘つきだな」
と不満げなセリフが返ってくる。
この時、Uさんの別の一面を感じた気がする。
静か、真面目、控えめ…今までのイメージはUさんのほんの一部に過ぎず、この一連の流れで好奇心や驚き、怒りなどUさんの周りをグルグルと回るように別の姿を観察できた。
この時感じる人間味は他の人とは違い、まるで絵画が動き出したかのような体験
に近いものだった。
これに付随するかのように、Uさんのことを可愛らしいなと思う。別に恋愛的な感情ではないものの、もう少しこの「イタズラ」を続けていたい、そんな気持ちが頭の中に腰かける感じがした。
ちょうど今みたいな梅雨に入りたての時期だった気がする。
賢明な読者の方々はお気づきであろうが、この話は嘘である。