火曜日はコーヒーをどうぞ

何が一番必要かといえばうつつを抜かすことかも知れない。もしも現を抜かさないとしたら目の前にあるのは現実だけ。現実は過去からの集大成でしかないのだから惰性で進むであろうほんの少し先の未来を除いては結果でしか無い。
フィクションは日常から離れた空間に質量が限りなく0に近い世界を創りつづけ、それを書き出していく作業だ。そこには過去だけを見る必要もないしモラルやタブーや自分に対する妥協もない。何億年の先の未来を作っても許される。作りかけで放置された世界すらある。
そんな世界をたくさん作っている人間は、いつもその世界と現実との間を行ったり来たりしているわけだから、現実が疎かになりやすいのは当たり前のことだ。作家なんてみんなダメ人間だと思う理由はそこにある。彼らが現実世界に対してどんなに正しそうなコメントを残したとしても頭からそれを信じることほど愚かなことは無い。だってどの世界のことを話しているのかは彼らにしかわからないのだから。
うつつを抜かすことは楽しい。いつもフラフラその世界を行ったり来たりしていたい。扉を開けたらまだ見ぬ恋人が待っているかもしれないし、ただ暗い焦土が広がっている地獄かもしれない。コックにもギャングにもなれる。
こんなことばかり言っていると現を抜かすというのは極めて非生産的なことばかりにも思えるが、扉を開けたらたまたま中から真理が飛び出してくることもある。あとから答え合わせをして見たところやはり合っていた。そんな事が数学や科学の世界で実際におきている。そうだ皆んなでノーベル賞を取ろう。
朝からまた嘘八百を書いてしまった。そろそろ現実に戻ろう。確か火曜日は良く行くカフェのコーヒーが安くなる日だった筈だ。何も用事はないけれどとにかく支度をして行ってみようと思う。
あれはどこにあるカフェだったろうか。