青木と石川

アルバイトの石川はおとなしい。
仕事の覚えが悪い訳ではないが決して自分から積極的には動こうとはしない。指示通りに黙々とこなす事をモットーとしているようだ。

勤務時間5分前にタイムカードを押し、定時になれば静かに帰っていく。二十代半ばと若いが遊んでいる雰囲気もない。
「最近の若者は淡白で積極性に欠けるわ」
同僚の青木はこの色白の若者を評して言う。

青木は後輩の面倒見がいい。進んで皆と関わろうとしない石川にも積極的に仕事を教え話題も振る。プライベートもおかまいなしにつっこんでいく。そんな兄貴分気質の青木に石川も最初の頃に比べ徐々に表情も柔らかくなっていった。石川が働き始めて二年近い時間が経過していた。

そんな矢先に開催された会社の飲み会に思い切って石川を誘ってみた。

彼はまさか自分を誘ってくるとは、といった戸惑いの色を浮かべ
「いやぁ‥‥関係性が」
そう呟くと彼はいそいそと作業に戻っていった。
部長の送別会という名目なのだしアルバイトでも気軽に参加すればいい。
残念だか仕方がない。人には都合というものがある。


世界が寝静まっている深夜働くことが多い。
休憩中狭い喫煙所で電灯も点けず煙草の煙を吐いていると、とりとめのない不安にかられることがある。そんな時、人好きのする青木と話をするのは気分転換にもなり楽しみのひとつになっている。
ところが普段ネアカに見える青木にも孤独な夜はやってくるようで、いつになく疲れた表情でスマホの画面に目を落としながら
「周りは皆結婚していくなぁ。遊んでくれる友達は減るばかりや。俺が死んだら葬式にきてな」
冗談まじりに言うが、私より年配で独身の彼の身になれば想像もできないような不安も生じることもあるのだろう。だから言っておいた。
「石川を誘っていくよ」
石川はやはりこういうだろうか。
「いやぁ‥‥関係性が」