終わりよければモラゴヘヨ

繁忙期だったり予定が入ってたりで開催できていなかった韓国語の練習会。今日は久しぶりに予定が合わせられた。と思ったら。


知人「急用で行けなくなりました」


なーんてLINEが届いた。約束の時間の2時間前のことである。ドタキャンである。


知人「来週ならできます」


そんなこと言って、来週また急用が入る予定なんじゃないの。そうやって諦めさせつつフェードアウトしようとしてるんじゃないの。


女の勘は当たる。勘だけだが私は結構むかついていた。





突然時間が空いてしまった。

今日は短縮勤務にしていたのだ。久しぶりの練習会なので早めに上がって、知人に日頃のお礼にキムチでも買おうと思っていたのだ。本場のオモニが作る、美味しいと評判のキムチだ。


練習がなくなってしまったのなら仕方がない。キムチはまた今度。

予定変更。今日は皮膚科に行こう。





半年前から症状が出ていたのだが、太ももの内側に毛穴サイズの赤い点々がある。ネットで調べると、一番近いのが単純性紫斑だ。

「死なない」「効果的な治療法はない」「治ったり出たりする」「老化」「20~40代の女性に多い」「ビタミンCをとることが推奨される」


一通り読んで、そうかそうかビタミンCか、と。Amazonで徳用サイズのビタミンCサプリメントを購入して飲み続けていた。
が。

一向によくならない。
「治ったり出たりする」とあったが、治らない。治ってる部分もあるのかもしれないが、完治しない。太ももの内側の内出血も密度が高くなって、なんかもうパっと見、全部赤い。まだ軽度だが、同じ症状が脛や腕にも出てきた。


「どうせビタミン剤しかもらえないんだろう」と面倒で病院に行ってなかったが、見た目が悪すぎる。
そろそろ諦めて病院に行くかと考えていたところに突如ドタキャンのせいで時間ができてしまった。これはきっと神のお告げだ。今日行け、と。


いつもの病院を調べると18:00までやっている。担当医の名前は




韓国人?




17:20頃、汗をかきかき病院に滑り込んだ。17:30が最終受付のはず。ギリギリセーフで保険証とカードを提出した。

家で着替えたり、足を洗ったり(夏のOLは足裏事情が凄惨だ)、歯を磨いたり(これはなんとなく)していたら時間はゆるゆる過ぎていったのだ。危なかった。

見ると、受付は18:00までだった。




院内の雑誌を読みながら待つ。待合室でおばあちゃんが職員と話す声が聞こえた。

「今日の先生、お名前は?」「◯先生ですよ」あぁやっぱり韓国のお名前。


皮膚科なので、美容皮膚にも詳しい医者かもしれない。患者の入れ替わりごとに診察室が開くと、看護士さんとはまた別の女性らしき声が聞こえた。

私の単純性紫斑にもバッチリ効くビタミン剤、ください。ついでに後頭部に小さいかさぶたが1年くらい治らないんです。薬ください。

そうこうしていると、ようやく私の番号が呼ばれた。





私「お願いしまーす」



男の人だーーーーーー


確かにネットで見たとき、担当医は韓国の名前で、女性でも男性でもあり得そうな漢字だった、でもさっき女性の声が、あれ


男の人だーーーーーー


先生「どうしました」

若いそして割とイケメンーーーーーー


私「足に内出血が出てまして」

足洗ったり歯磨きしてきてよかったーー



田辺誠一系の、アラサーくらいのイケメン医者であった。少し緊張する。つーか、


太もも見せたくないよーーーーー


先に脛とふくらはぎの点々を見せる。しかし、真打ちはこんなもんじゃない。

仕方がない。互いに仕事だ。医者は患部を見るのが仕事だし、患者の私は患部を見せるのが仕事だ。タスクだ、To Doリストの一項目だ!よっしゃ頑張れ!頑張れアタシー!




膝上15センチだけ出した。


アラサーOLの緩みきった太ももをイケメン医師に見せたくないのが乙女心ってもんでしょう?!


先生「んー、あぁ」


先生はおもむろにプレパラート(顕微鏡で観察するときに使うガラスの板)を私の緩みきった太ももやふくらはぎに押し当てる。


先生「紫斑だ!紫斑だ紫斑!紫斑だ。」




何回言うのよ。
あともう恥ずかしいのでやめてください。

医者独特の若干の変態性(発見に対する喜び)を垣間見た気がする。



先生「何か病気とかしてます?」


私「ないです。」近年稀に見る健康体である。


先生「病気とか飲んでる薬とかで紫斑が出る場合とか、あとは老人の場合とかあるんですよ」


私「老、人…」苦笑である。



そして正式に単純性紫斑だと診断してもらった。つまり原因不明で命に関わらないってやつだ。



先生「もうネットで調べられてると思いますけど、効果的な治療法はないんですね。」


私「調べました。ビタミンCがいいと書いてあって、飲んでます」


先生「それね、大航海時代に海上でビタミンとれなくて死ぬ、みたいな理論なんですよね」


なにーーーー大航海時代理論ーーーー?!いやはや感じてはいたけど、改めて医者から言われると心許ない…


先生「止血剤出してみますんで、飲んでください」




韓国に妙に、且つ妙な縁のある日だった。


日本語を話そうとしない韓国人にドタキャンされ、バックグラウンドは知らないがお名前が韓国なイケメン医師にプレパラートを太ももに押し当てられた。



先生、若かったなぁ。腕毛、なんにもなかったなぁ。

そういえば、後頭部のかさぶたのこと、言うの忘れた。

そういえば、知人のLINEに返事するのを忘れていた。

そういえば、そもそも既読をつけるのも忘れていた。


知人は私がひとりで待ちぼうけているとでも思っていたのだろうか。


まぁいっか。



先生がイケメンだったから。

まぁいっか。

既読はまだつけない。