オーダー入ります


さあ、お楽しみのデザートだ。
何にします?

「えっと・・・私は苺フロマージュ」

「じゃあ、私はこのダークチョコガナッシュ」

あーじゃ、わたくしはこの特製ティラミスで。
あ、はい。3人共珈琲でいいよね?
ええ。じゃあ、全員珈琲で。

しばらくして品物が運ばれてくる。

「綺麗~~。」

「苺って、映えるよね~」

「ガナッシュも美味しそう。」

「質実剛健って感じよね。」

「何よそれ~~。」

一人遅れていた、わたくしの特製ティラミスが運ばれて来た。

「あーーっ!!!」

「いや、いいなあ~~。」

「私もそれにすれば良かった~~。」

本当に美味しそうなティラミス。
いや、そんなこと言われてもね。・・・って言いながら、
わたくしは、働いていた頃の同僚、南ちゃんのことを思いだす。

南ちゃんは、なぜかわたくしと一緒にランチに行きたがった。

「ねえ、tonchikiさん、一緒に行きましょうよ~~。」

なぜそんな風にわたくしに懐いてくれるのかは、判らなかったけれど
そう言われて、度々一緒にランチを食べた。

繁華街の中心にわたくしが勤める会社はあって、
付近の店を軒並み制覇すると
タクシーに乗って、ちょっと郊外まで行ったりもした。

で、その南ちゃんが、オーダーの後料理が運ばれてくる度、
いつも残念がるというか、悔しがるのだ。

「あー!!tonchikiさんの方が美味しそう!
私もそっちにすれば良かったー!!」

いや、だから、そんな事言われてもね。

何回かそういうことが続くと
「今日はtonchikiさんと同じものにします!」

ははは。まあ、お好きなように。

そう言いつつもメニューを見る南ちゃん。

「じゃあ、わたくしはランチセットで、鱧を。」

「・・・私は・・ランチセットで、お刺身。」

あら、一緒じゃなかったの?とからかうと、むきになって
「でも、おんなじランチセットですから!」

そして繰り返される
「あー!!tonchikiさんの方が美味しそう!
私もそっちにすれば良かったー!!」

彼女の結婚相手は6つ下。
彼女が教えていた生け花教室の生徒さんだった。

誠実そうで、南ちゃんに良く似合っていた。

「もう、あっちにすれば良かったーは、なしだね。」

そう言うと真っ赤になってた南ちゃん。
今頃どうしているだろう。

さあ、じゃあ、いただきます。

「tonchikiさんの本当に美味しそう。
あー私もそっちにすれば良かった。
次、来たら、絶対そっちを頼む!」


#わたくしの食卓