怖れる

 外人を見てすぐどこの国の人だか分らないという人もいますが、
比較的イタリア人やオランダ人、ドイツ人はなんとなく分かりますよね。
一般人は別にしても、外国の映画で麻薬カラミだと
 「あっコロンビア人だ」とか、
無表情で怖い顔をした眉の薄い男は
 「ロシアの悪党」とか、
最近は中東の国の悪人が多くなったので、
全部ひっくるめて “アルカイダ” とか。

貧民街で盗みを働く少年は
「メキシコ系かニカラグア」で、
もっと昔は「イタリア人かアイルランド人」でした。

ついでに言うと、気味の悪い男は「ドイツ人」の設定が多かった気がします。

  

 

 千代田区にある設計事務所で働いているアレッサンドロ君という日系二世のスペイン人がいます。日本語がペラペラだとみんな驚きますが、彼のスペイン語はぼろぼろなんです。
だって、日本で生まれて日本で育ち、スペインには行ったこともない青年ですから。

この彼が、一目見てスペイン人と分かる顔なんですねー。
まず、ラテン系のものすごく濃い顔立ちです。目はおでこからかなり深く沈み込み、鼻は高々としています。自粛中はヒゲを伸ばしたため、あごからこめかみまでびっしりヒゲで埋まっていて年齢よりかなり大人に見えます。

スペイン人の平均身長は日本人とほぼ同じなのですが、彼は181cmもあり、
いかにも “The外人” “Theスペイン人” なんです。

 

 そんな“Theスペイン人”のアレッサンドロ君ですから、コロナ菌に怯える日本人から見ると “Theコロナ菌” なんですね。スペインで大流行して死者が多数出たころから彼の周りから一時的とはいえ、人がいなくなりました。

実家の大阪に帰ってからも彼の家族が買い物に行くと、さすがに気味悪がられてゆっくりと選ぶことも出来ず、さっさと済まさなければなりません。
彼も彼の家族も、すでに検査で陰性と出ているんですけど、「陰性です」と言って歩くわけにもいきません。
 

そんな訳で、批判を覚悟していますが、僕は彼の家族と何度か食事を一緒にとりました。
“バイ菌扱い”されるストレスを軽くしてあげられたらと思ったんです。差別ではありませんが、入店を断られたり嫌な顔で見られると、誰でも落ち込んでしまいますからね。
 

 この数日を見ると明日25日には要請解除になりそうなので彼が東京へ戻ることになり見送りに行ったのですが、途中で読む本でも買ってあげようと売店に入ると、一緒にいたとこを見た人から僕まで“コロナ怪獣”のような目で見られ笑ってしまいました。

そうですよね。それでいいんです
そうやって収束に向かわなければいけません。
“コロナ怪獣” となってしまった僕は、他の人から見れば恐ろしい存在なのです。

みなさんゴメンナサイ。

 

 身勝手な自己満足で怪物となった僕は、アレッサンドロ君と別れた後は京都に戻り、また普通の人に戻って街の中に紛れていきました。 

 


人と人の接触を避けなければならない時間が長引いて、
心まで分断されないことを祈ります。
 

相手がスペイン人であろうと、中国人であろうと……