<a href="https://www.shortnote.jp/view/tags/%E5%9C%B0%E5%85%83%E3%81%AE%E5%91%B3" >#地元の味</a>

周回遅れで #地元の味
地元の味というと、最初に思い出すのは、鰻。
うちの近所には、食べログの百名店に選出された鰻屋が2軒ある。
鰻重の特上が、一軒は6,800円、もう一軒は4,500円。
どちらの店も、注文を受けてから裂いて蒸して焼いて…だから、45分から1時間はかかる。
昔、母親に連れて行ってもらう時は、必ず本屋でマンガ雑誌を買ってもらっていた。冒険王とか月刊少年マガジンとか、分厚いやつ。どんなに分厚いマンガでも完全に読み切れてしまうので、中学生くらいからは文庫本の小説を買ってもらっていた。
私の記憶では、最長1時間半待ったこともある。
すると、う巻き、うざくなんかを頼んで、日本酒チビチビ呑んで待ったりするから、一人一万円なんか軽く飛んでいく。
コースを頼もうものなら、一人前15,000円、18,000円……
だから、どちらの店に行くにしても、最低予算は一人2万円。2万5千円は持って行かないと安心できない。
そんな高級店を日常的になんか使えるわけもないので、年に一度か二度しか行けない。
それも、なにかしら理由がないといけない。誕生日とか、お祝いとか。
この十年くらい、同級生たちは、自分の爺さん婆さんや、両親を連れて行っている。
爺さん婆さんたちにしても、この鰻屋で食べるのはステータスらしく、食った後、一週間くらいはご近所に「孫にどこそこの鰻をご馳走になった」と自慢しまくる。すると、他の爺婆も羨ましがって、自分の孫にねだる。
というわけで、どちらの鰻も、地元界隈では「老人殺しの鰻」という異名がついてるとか、ついてないとか……
肝心のお味だが、これはもう文句がない。
なにが旨いって、とにかくタレが最高。
さらさらとして甘さ控えめ、円い塩気。
炭火で焼いた香ばしい香りが、もうたまらない。
蒲焼は、ふわっふわ。歯の出番がないほどに柔らかい。
がつがつといきたいところを、もったいないからと、自然におちょぼ口でゆっくり食べる。一口ごとに噛みしめる。
なにが気が利いてるって、お新香がこれまた美味い。
東京のお新香といえば、もちろん糠漬けである。
創業から受け継いできた糠床で漬けたキュウリや大根の美味いこと!
ちなみに、地元の人間は、誕生日やお祝い以外で行くなら、冬(11-3月)。
夏場は絶対に行かない。
だって、鰻の旬は冬だもの。冬の鰻は脂がしっかり乗っていて旨い。
店の方でも、土用の丑の日は休みだったりするくらい。
私のやり方は、
客の少ない平日の夕方に行って、
まず、日本酒の冷(ひや)とお新香を頼む。
その時、「よーく漬かってるところ、お願い」。
すると、キュウリなんか色褪せて萎んでるが、いい感じで酸味がのってるのを出してくれる。これがもう、日本酒の冷に抜群に合う。
そして、白焼きを注文し、のーんびりと待つ。
小一時間待って登場した白焼きに山葵をのせてチビチビと食べながら、日本酒をこっくりこっくり。
だいたい五合くらい呑んで、帰る。
で、だいたい家に帰ってから、
(やっぱり鰻重食べればよかったなあ)
と後悔しながら布団に入るのである。