西安駅前の「子ども食堂」 1987.8

1987年夏の旅で、西安には二度滞在した。初回は鉄道事故の乗り継ぎでのための1泊2日滞在、二度目はシルクロードの帰路、3泊4日の滞在。兵馬俑や大雁塔など、西安が誇る史跡には、二度目の滞在で見て回った。
一度目の滞在で覚えている出来事は2つある。1つは「子ども食堂」、もう1つは「ホテルのシャワールームのアクシデント」だ。
まず、「子ども食堂」について書き留めておく。
西安は陝西省の省会地(省庁所在地)である。中国の省は、日本の都道府県にあたるが規模が違う。陝西省の面積は206平方キロメートル、2018年の人口は3835万人。面積で韓国の2倍、人口はポーランドと同規模。1つの国家の首都といっても過言でない。
今でこそ、中国の省会地のターミナル駅周辺は、「省の都」にふさわしい街並みが整備されているが、1987年夏の西安駅前は、新しいターミナルを建設中ではあったものの、日干し煉瓦を積んだ家屋や店舗が渾然一体となっていた。
駅の出口を出たすぐ右手に小さな食堂の看板があり、手っ取り早くそこの食堂に入ってみた。清潔とはいえない10畳ほどのスペースで、小さな正方形のテーブルの前に腰を下ろす。白い上着を着た姉・弟のような兄弟が階段を降りてきた。年齢は15歳と12歳くらいに見えた。まるで中学の文化祭の「子ども食堂」だ。
姉はメニューを差し出し、しっかりとした口調で、私の目をじっと見て注文を取った。見た目はローティーンであっても、物腰は立派な社会人だった。
奥の厨房では母親らしき女性が調理をしていた。家族経営の食堂のようだ。
西安駅を出てすぐ。最高の立地に、どのような経緯でこの親子は食堂を開いたのだろう。
そして、この姉・弟はきっと今では40代のはず。西安のどこかで、息子・娘と食堂を開いていたらよいのに。