お店は優しかったのに、客が優しくなかったハナシ

「ウソのようなホントのハナシ」の続編というか、補足のようなハナシです。



私の飲み友達の中には、某繁華街を中心に不動産管理と飲食店を経営してるRさんという人がいます。
この馬鹿ハナシをしてくれたRさんです。


このRさん、念願の第一子が生まれたばかりの頃、「お子様連れに優しいカフェ・レストラン」を開店したことがあります。
奥さんから「子連れが安心して入れる店がなくって困る」という話を聞かされ、親バカ×「評判になるかも」と商売ッ気を出したんですね。
立地は、繁華街からやや離れた文教地区。某大学のすぐ近く。銀行から頼まれて購入したはいいが、イマイチ回りが悪い物件。
自分の会社の飲食部門社員のうち、保育士の資格をもつ社員を店長にして、子持ちの優しい社員をピックアップ。子供が怪我をしにくい設計をして、カフェレストランをオープン。
Rさんのソロバン通り、育児雑誌や女性雑誌、新聞の夕刊にも取り上げられ、わざわざ電車に乗ってやってくるお客様もいるほど好評。

しかし、オープンから3ヶ月ほどで問題が起き始めました……

まず、カトラリー(フォーク、スプーンなど)が3割くらい紛失……
このカトラリーも木曽から取り寄せた木製のもの。一般的なカトラリーの3倍値。
食器の盗難対策は無理と諦め、北欧の白樺製使い捨てスプーンやフォークで代用。
そして、備品として揃えたオモチャの紛失。
北欧製の木製積み木など高い品から順番に失くなっていく。
ぬいぐるみは、全て丸洗いできるコットン製のこれまた外国製の高価なもの。これもポツンポツンと消えていく。
最初は「子供が間違えて持って行っちゃったのかな?」と思っていた店長。
ある日、堂々とぬいぐるみを持っていくママさんを見つけたので「すみません。そちらお店のものなので」と返してもらおうとすると、「ちょっと借りて行くだけだから」と返そうとしない。
店長、意味がわからず「いや、あの、貸出とかやってないんですけど……」と言うと、「ちょっとお試しで借りて行って、後でちゃんと返すから!」。店長、こわばりながら「そういうのはやってないんですよー」と取り返そうとすると、ママさん、ぬいぐるみを放り投げて「いらないわよ、こんなモン! ママに優しい店って言ってたじゃないの! 嘘つき! もう二度と来ない!」とプリプリ帰っていった。
店長さん、おもちゃは紛失ではなく盗難だということで、今までプレイスペースに置いていたおもちゃを、リクエストを受けたら伝票に書いて貸し出す形にしました。
店長からの報告を受けたRさん「まあ、色々な人がいるし、酔っぱらいよりはマシだろう」と思ってたんですが……

この紛失盗難が目につくようになってから次々とトラブル発生。
一番酷いのが子供置き去りというか、放置。
店内にいてママ友同士のお喋りに夢中ならともかく、子供はキッズスペースに置いてきぼりにして、ママは繁華街のデパートにお出かけ。
1時間も2時間も置き去りにされた上、ママの姿が見えなくなると子供は大泣き←そりゃそうだ。
挙句の果てには、閉店時間になっても迎えにこないママさんや、開店前から子供だけ店頭に置いてくママさんまで出始めた。
店長「これはいつか事故や事件が起きる」と判断し、メニューといっしょに「うちは保育所ではありません。お子様の置き去りは警察や地域の児童相談所に届け出ます」という注意書きを渡すことに……

ある日の昼下がり、Rさんの奥さんがお店に。Rさんの子供も2歳を過ぎて、念願の親子外食デビューってわけだったのです。
ランチタイムに、奥さんは一番高いランチプレート、子供にはお子様ランチプレートを頼んで「いただきまーす」。
さっきまでキッズコーナーにいた4歳ぐらいの子供がテーブルにやってきて、ジーッとR母子の食事を見つめている。奥さんはなるべく見ないようにして食事を始めようとしたら、
「◯◯くーん、こういう時は、なんて言うんだっけぇ?」と、その子のママさんらしき人から声。
◯◯くんと呼ばれた4歳児、大きな声で「ちょーだいっ!」と言ったかと思うと、いきなりR奥さんのランチプレートに手を突っ込む!?
R奥さんが「ええ! ちょっとなに!」と慌てていると、ママさんの方はニッコニコしながら「うちの子、ポテト大好きなんでえ」。
その間にも◯◯くんが手を突っ込んだランチプレートはグッチャグチャ……
手づかみで食べている◯◯くんはモグモグニコニコ……
騒ぎに慌てて駆けつけた店長、ママさんと◯◯くんを見た瞬間に「また、お客様ですか!? 他のお客様に御迷惑になんで、ちゃんとお子様を見てあげてください」。
◯◯ママは「言ってるんですけどぉ、うちの子、ヤンチャでぇ」と悪びれず……
後に店長に聞くと、この◯◯くんは他のお客のテーブルのものを手づかみで食べちゃう常習犯だったとか……

その日の夜、奥さんはお店の惨状を夫であり、社長でもあるRさんに報告。そして、
「私が悪かった。ありゃ酷い。ああいう子連れがいる限り、あの業態は無理だ」
Rさん、次の日、店長以下従業員に事情を聞いてみると、オープン前は菩薩のように優しかったはずのスタッフは、みんな鬼の形相。
みな、口々に「あの店は閉店すべきです。閉店しないんなら、私たちが辞めます」。
店長に至っては「もう、私は子連れお断りのお店でしか働きません!」宣言まで。

結局、この店は1年もたずに閉店……
その後、内装を生かして、キッズスペースは有機食品売り場にして、自然食レストランへと生まれ変わりました。
昼間は子連れお断りではないが、騒ぐ子供、走り回る子供がいたら、「お帰りください」という方針に。なお、ディナータイムは未就学児童お断り。
それでも「意識の高いママさん」の神経質なクレームやら、そのママさんたちにより育てられた「自然食でノビノビ育った子供」に悩まされ、結局、今は学生相手の安居酒屋になっています。
(居酒屋は大繁盛で、今も6年以上続いている……)

Rさん曰く「子連れママさんに優しい店やるんだったら、都庁や区庁舎の職員食堂でやりゃいいんだよ。うちはおかげで数百万円の赤字だぜ……」。

私ね、子連れを非難するつもりはないんですよ。
ベビーカーだって、満員電車でも黙認してます。子育てって、もしもの時の荷物が多くなるの知ってますし。子供が歩けるようになっても、大人の足で10分のところが、子供連れだと30分かかるってわかってますし。
高級レストランやお酒を出す店ではない、ファミレスやファストフードは、家族連れが主役。外食ではしゃぐ子供の声が大きくなってしまうのも仕方ないこと。
赤ん坊がところかまわず泣くのも当たり前。昔から「赤ちゃんは泣くのが仕事」ってぐらいですから。泣きやまない赤ちゃんを抱えて、一番困っているのはお母さんでしょうしね。

でもね、
飲食店で走り回る子供、飛び跳ねてる子供、
怪鳥音の如き奇声を一度や二度ならともかく、発し続けている子供、
食器を楽器のようにガチャガチャやって遊ぶ子供。
こりゃあ、いけません。遊ぶなら公園で。
家の中ではご勝手にどうぞ。でも、他人様に迷惑をかけちゃいけない。
しかも、そういう子供の母親に限って、注意を全くしないんですよねえ。
注意をしたとしても「あらあら、ダメよー」程度。

昭和時代には、こんな子は見たことないんだけどなあ。
昭和40年代は、まだ上野あたりには「浮浪児」ってのを見かけました。正確には浮浪児ではなく、ルンペン(死語)の子供だったりしたんでしょうけれどね。
身なりは汚い浮浪児であっても、人のいる場所で騒いだり奇声を発する子は見なかったなあ。
今の「浮浪児」よりも行儀の悪い子って、いつ頃から出始めたんだろうか……

※浮浪児(ふろうじ)とは「親や保護者がなく、一定の住居も持たずにさまよい暮らす子供」