初めての気持ち

私が幼い頃、(何歳だったかは忘れたけれど……)家で親戚の犬を1日預かったことがある。白くてモフモフした毛並みの小さな赤ちゃんマルチーズだ。
以前から犬を飼いたかった私はその子が可愛くてしょうがなくて、出会った瞬間から必要以上によしよしなでなでを繰り返した。
昼頃やってきたその子は、遊ぶと直ぐに懐いてくれて、数時間たった頃には愛おしさが爆発していた。
うちには犬用のケージが無かったので、大きな洗濯カゴをケージの代わりにした。夜はそこで過ごさせることにした。
夜。
私は子犬が気になって気になってしょうがなかった。子供部屋から抜け出して犬の様子を見に行った。私の気配に気づき、起きてしまった。
私はフローリングの床に脚を伸ばして座り、その子を脚の上にのせて優しく頭をなでた。
子犬はうとうとし始めて目を閉じる。
というわけで私が今度は眠れない状況になるのだった。
カゴに戻すと起きてしまい、また優しく頭を撫でてようやく寝かしつけた。夜更けまで子犬を見つめていた。
翌朝、早朝から親戚のおばさん(子犬の飼い主)がやって来て、早々に子犬が連れて帰られることになった。母親犬が子犬を心配してか、夜中に吠えてしまい眠れなかったらしい。
おばさんが来ると、子犬は嬉しそうに尻尾をふり、一目散に駆け寄った。
その光景を見た私は、
寂しさ、嫉妬、悲しさが入り混じった複雑な気持ちになっていた。
恋愛したことのない私が、まるで失恋したような、初めての気持ちになった時だった。
おばさんが子犬の名前を教えてくれなかったのも、今思えば防衛だったのかもしれない。犬が家族以外にあまり懐かないように。
子犬はあっという間にうちから姿を消した。
私の脚には、あの時の子犬の温もりがまだ消えていなかった。
あの子、今も元気にしているだろうか?
ふと、思い出した、夜更けなのでした。