途立つ

行ってくるね!
小学校の卒業式が終わって10日余り
息子は、千歳空港にいた。
大好きな姉がくれた赤いキャップ
左腕には真新しい腕時計
右手には片道の航空券
小さな彼の背中には、大きな期待と小さな不安
いつかは、旅立つとわかっていた
そう、いつか
いつでも帰っておいで、と
行かなくてもいい、と
心の声がもれそうになるのを必死で止める
彼の人生の大冒険の始まりだもの
満面の笑みで、送り出そう
元気で、行ってらっしゃい!
夏休み前に、往復の航空券送るね!
そんな母の言葉を背に
振り返らない12歳の息子
涙で滲んだ搭乗ゲートは
蜃気楼のように
ゆらゆら私の瞳にいつまで写っていた