「お父さん!」

外を歩く子どもの、そう呼びかける声が聞こえた。お父さんになにか尋ねているような話し声が続いて、答える声も聞こえてきた。
突然、泣けてきて。
もしも、私が親権者になって、元夫がひとりで暮らしていたとしたら。
こんな風に、家にひとりでいる時に、「お母さん!」という子どもの声を耳にしたなら。
元夫はどう思うかと。
元夫と、ほんの少しの間だが別居したことがあった。ひとりきりの部屋の中で、私に対して憤りと憎しみの気持ちしか持たなかったと言っていた。
対して、私は、暗くて寒い部屋にひとりで帰る元夫は辛かろうと、何度か涙が出た。距離を置けてホッとして、その状況がしばらく続くことを望んではいたけれど、出迎える子どもたちのいない部屋に帰る侘しさややり切れなさを思うと、申し訳なさも多分にあった。
そんな風に考えるのは、子どもたちと一緒にいられる立場だったから、と思っていたけれど、今も考えは変わらない。ひとりになるのが私でよかったのだと思う。もちろんそれは、元夫だけのことを考えれば、の話。
来週末には、次男が引越しをする。三男と長女と、三人の暮らしが始まる元夫。小さなお父さんだった次男がいなくなり、三男にかかる負担が増えるだろうし、長女を宥める相手もいなくなる。子どもたちの「お父さん!」の声を、めんどくさいと思っても邪険にしないでやってほしい。子どもたちがまず頼りにするのは、お父さんなのだから。