初恋♡チョコバット

私の人生最大の汚点。今思い出しても恥ずかしくてたまらない。
そんな初恋の思い出を暴露します。
今から数十年前……小学校低学年の頃。
学校で急に英語の授業が導入されて、勉強についていけるか不安だった私に
近所の大学生のお兄さんが、無償で家庭教師をしてくれることになりました。
イケメンで優男だったので、そりゃ憧れて好きになっちまうよねー。
女の子にはよくある話でよくあるパターン。テンプレってやつです。
勉強なんて二の次で、ほんの数時間二人っきりでいられるひとときが幸せ……
そんな私の初恋に最悪な結末が忍び寄ってきたのは、2月某日のこと。
私「お母さーん。お小遣いほしいんだけど……」
母「何に使うん?またマンガとかに使うんやったら却下やで」
私「そーじゃないよ!家庭教師のお兄さんにチョコレート渡したくて……。
ほら、もうすぐバレンタインデーでしょ?」
この頃の私のお小遣いは、親に申告制(何に使うかを言って許可が出たら貰える)だったから、いつもお世話になっているという建前を使って、母にお願いしたのがきっかけだった。
母「そやな。いつもあんたの面倒見てもらってるし。お小遣い出したるわ」
私「やった!!……あ、でも、大学生の人にどんなチョコ渡せばいいのかな?
男の人ってどんなチョコだったら喜んでくれる?」
当時の私は、愚かにも初恋を実らせようと必死だった。
お兄さんはイケメンだったからそりゃモテモテで、何度も女の人と一緒にいるのを目撃した。それも毎回違う女の人で、どの人もすっごくキレイだった。
すでに年齢で他の人より差がついていたので、間違いだけは犯したくない。
誰よりも綺羅びやかなチョコを渡さなければいけない。バレンタインデーというイベントを、とにかく絶対に成功させたいと母に事情を説明すると。
母「うーん……それやったらお母さんがめっちゃイイのを選んだるわ」
私「え!いいの!?」
母「ちょうど今からイオンに買い物行くとこやったし……
今やったらバレンタインデーフェアやってるやろ?」
その提案に「何て素晴らしい!お母様ありがとうっ!!」と
一も二も無く受け入れた私は、イオンへと出かける母を大手を振って見送った。
数時間後、母が持って帰ってきたのはジャンプ6冊分を積み重ねたような巨大な箱。
可愛いバレンタイン包装紙とリボンで包まれていたけれど……それにしてはやけに大きい。
私「ちょっと……大きすぎない?」
母「何言ってるんや!ライバルは多いんやろ?まずはインパクト勝負や!」
なるほど!さっすがお母様!!伊達に私より長生きしてるだけのことはあるね!
と納得した私は、このとき中身をキチンと確認しなかったことを一生後悔することになる。
そしてバレンタインデー当日。
母が用意してくれたチョコを渡すと、お兄さんはそのデカさに驚き大喜び!!
よく覚えていないけれど甘い言葉とハグと共に、ホワイトデーにお返しをくれると約束してくれた。
やったああああああ!!大成功だああああああああ!!!!
有頂天になった私が、更に勉強に身が入らなくなったのはいうまでもない。
それから一ヶ月後、ホワイトデー当日。
この日はたまたま家庭教師の日だったので、私はルンルン気分でお兄さんの家へ向かった。
いつも通りお兄さんの部屋に通されて二人きりになり、ドキドキソワソワしていた。
お兄さん「あ、美々庵ちゃん。はい、これ。ホワイトデーのお返し」
部屋に入るなりすぐ、お兄さんは私に可愛い袋を手渡してくれた。
重たくて固い瓶のような感触が手に伝わってきて、愛の重みを感じるなー♪
嬉しいなーなんてバカなことを考えていたと思う……のだけど、
喜びに浸る前にちょっと気になることがあった。
お兄さん「……クッ……ふふっ……」
私「?……あのう……どうしたんですか?」
お兄さん「あ、ごめんごめん!ちょっと思い出し笑いしちゃったよ」
私「そ、そうですか……???」
……何だろうこの奇妙なリアクションは。てか、何で面白そうに笑うんだろう。
何か面白いことがあったのかな?それとも私が何かしたんだろうか……。
お兄さん「いやぁ~あんなチョコ貰ったの生まれて初めてで……はははっ」
お兄さん「まだ全部食べきれてないんだけど、ヒットいっぱい出たよw」
――――あ、今ものすごーく嫌な予感。
お兄さん「ホームランも5本くらいかな?出たんだけど、当たったらもう一本貰えるんだよね?当たりの袋は美々庵ちゃんに返したほうがいい?」
この瞬間、私の初恋は終わった。
高層ビルから身投げしたような衝撃を受けて木っ端微塵に砕け散った。
こみ上げてくる怒りを抑えられなくて、帰宅した私はすぐに母を怒鳴りつけた。
あんなに恥をかいたのは生まれて初めてだと。恥ずかしさで今なら死ねる。
お母さんを信じた私がバカだった。中身ってまさかアレじゃないよね!?と。
母「ああ、中身?チョコバットやけど???」
それがどうしたの?って顔してんじゃねーよ!!
よりにもよって何でチョコバット!?バレンタインデーにそのチョイスありえないでしょ!!私はもうお兄さんには会えないっ!死ぬしかないじゃないか!!
母「イオンに行く途中に卸売市場に通りかかったんやけど、ちょうどセールで
チョコバット一箱がめちゃ安かったんや。アレはインパクト最強やろ?」
直後、精神がぶっ壊れた私は何時間も泣き喚いた。
その後、お兄さんから貰ったホワイトデーのお返しの中身が
クマのクッキー(クッキーの意味はお友達)で、私の初恋は完全終了。
満塁さよならホームランを母に打たれ、完膚なきまでに叩きのめされてしまった。
それ以来、私はチョコバットを買っていない。