恋人は(いない)サンタクロース

ちゅうい:今年もよい子にしてサンタさんをまっているキミは、よまないでね。
12月のビッグイベント、クリスマス。みなさんは毎年どのようにして過ごされるだろうか。
家族とほっこり派だろうか。もしくは恋人とイチャイチャ派であろうか。僕が思うに、この2つの過ごし方が、最も定番かつ楽しいクリスマスの過ごし方だ。
しかし、僕は家族や恋人と過ごさずとも、とても楽しいクリスマスを過ごすことができた年があった。
それは大学1年目のクリスマスのこと。この年、僕はサンタになった。
この言葉の意味するところは「パーティーやバイトでサンタ衣装を着た」ということではない。そんな形だけのなんちゃってサンタになった訳ではない。サンタの最も重要な仕事である「子どもたちにプレゼントを届ける」というのをやってのけたのだ。
それは実際にお宅を訪問し、プレゼントを届けるというステキなイベント。
その仕組みはこうだ。
まず、イベントに申し込んだ親御さんが、子どもの欲しいプレゼントを調査し、購入する。
次に、そのプレゼントをイベント主催者に渡し、住所や子どもの名前、訪問時間の希望などを伝える。
あとは、当日に、サンタに扮したボランティアスタッフ達がそれぞれのお宅を訪問する。
子どもたちはサプライズで登場したサンタにびっくり、という流れだ。
サンタになるための研修を受け、迎えたクリスマス当日。
拠点となる施設には、たくさんのサンタ達と、プレゼントの山。そして、ワクワクドキドキの気持ち。
黒髪がはみ出てないかなど、衣装チェックをしていざ出発。
トナカイ役の大人が運転する車で目的の家まで向かい、少し離れたところから歩いて行く。サンタはソリで来るからだ。決して軽自動車などでは来ない。その辺りも抜かりがないのがすごいと思った。
衣装の最終チェックも行い、ドキドキしながらインターホンを押した。玄関先が見えるような仕組みになっているのだろう、まだドアが開いていないのに雄叫びにも似た歓喜の声が響いてきた。
程なくしてドアが開いていよいよご対面。
目が悪くなり、大学から常時眼鏡をかけるようになった僕。サンタに黒縁眼鏡のイメージはないとのことで外していて物凄くボンヤリとした視界だったが、それでも分かるぐらい子どもたちはキラキラしたとても嬉しそうな表情であった。
そして、進行役の女子サンタと共にプレゼントを渡した。
興奮しているのかビリビリと勢いよく包装を破き、お目当てのプレゼントが出てきてさらに大興奮。
その様子にこちらも嬉しくなった。
何軒か回らなくてはいけないので、束の間の時間を過ごし、お別れ。
最初に訪問した家の子は、なんとサンタさんに手紙を書いてくれていた。「お仕事頑張ってください」といった内容に加え「外にトナカイさんの水を置いてます」と書いてくれていて微笑ましかった。
嬉しい気持ちのまま、また次のお宅に向かったのだった。
僕がこのイベントに参加した動機としては「面白い大学生活を送りたい」というのもあったが、1番の動機は「今年も野郎だけで過ごすなんて嫌だぁぁぁ」という不純なものであった。
でも、そんなことどうでもよくなるぐらい、素敵なクリスマスになった。プレゼントをあげる立場だったのに、たくさんのプレゼントをもらえた様な気持ちだった。
この体験が忘れられず、次の年もまた次の年も、僕はサンタとして過ごした。
決して彼女が出来ず寂しかったからではない。決して。
興奮し過ぎで転げる子、ビックリして泣いちゃう子、全力で疑ってくる子など様々な子がいたが、みんなにプレゼントと素敵な夜を届けられたことは僕の誇りだ。