Oさんの話

Oさんという方がいた
2人の子供さんの学資保険に加入されていて
もうすぐ満期がくる方だった
シングルマザーで
Oさんの親御さんは両方とも大学生の頃に亡くされてて
Oさん自身はパートで働いていた。親御さんが残してくれた、バブル期に億超えてたのでは?みたいな立派なマンションに住んでいた
毎年1回会って、いつもそのマンションのエントランスで契約内容の話をしていて…
ある年ついに学資保険も2人とも満期になり
これで会えるの終わりかな?と思っていたら
自分が他社で入っている保険が高いから、保障抑えて安くしたい。子供も18歳になったし、たくさん保障は要らないとの事
ただ、まだ大学生だったり専門学校もあるからなぁと思い、その旨を話しましたが
本人は毎月の出資を抑えたいと譲らなかったのと、医療保障を充実させたいとの事で
医療保障重視のプランに変更
話を聞いていると
親御さんの時代から弊社に加入してくれていて、親御さんは会社を興していたそうです
亡くなった時に会社に1億円を弊社が保険金として出して、会社畳む費用に充てる事が出来たとの事
その時に弊社との繋がりは切ってはいけないと思ったらしく、学資保険に加入、そしてそれが満期になったので今度は自身の保険でお世話になりたいと
なんて義理堅い人なんやなぁ…なんて思いつつ、これからもよろしくお願いしますとお互い頭下げつつ
Oさんとは仲良くなっていた
3年後
Oさんにガンが見つかり、余命半年…
そこからのOさんは頑張っていた
今みたいな抗がん剤治療だけで入院しなくても給付金が出るような特約は弊社は加入時にはなかったので
とにかく入院出来ないかお医者さんと相談してみてはどうか?と話したところ
元々体力が無かったOさんは、やはり抗がん剤治療の通院は難しかったみたいで即入院、退院、その繰り返しだった
途中手術をし、成功したと連絡を受け、電話で2人して喜んだ
退院後、体調が良いので…と言われ会いに行ったけど、どちらかといえばふっくらしていたOさんが別人のようになっていてびっくりした
4月の夜に電話が来て
Oさんは泣いていて
ガンがリンパに移転していて
手術や治療ではもうどうにもならない事
悔しい
どうしたらいいかわからない
私も途中から何も聞こえないくらい放心してしまって、どうして?何故?と頭でグルグル回っていた
まだ諦めないで。やれる治療は全部しましょう。うちの会社はお金しか出せないけど、治療してまたお茶しましょう。それしか言えなかった
私の友達が寺で働いていて、そこはがん封じのお寺なのでお守りを送り、完治して一緒に京都のお寺に納めにいきましょうと手紙を添えて…
5月の終わりに見知らぬ番号から電話があり
Oさんの息子さんから、Oさんが亡くなった事を聞かされ、本当に目の前真っ白になったけど
一瞬で泣きそうになったけど、私も保険業のプロだからと自分に言い聞かせ、涙こらえて
最後請求出来てない入院給付金と死亡保険金を受け取ってもらう作業がある旨を伝え
いつもOさんと話していた、マンションのエントランスで息子さんと対面
Oさんにそっくりな、礼儀正しい息子さんでした
まだ20歳前半なのにしっかりしていて
「お守りくれましたよね。母はずっと身につけていました」って聞いて
目の前が滲んでしまったけど、堪えて、堪えて…
最後に息子さんに「ここの会社でずっとたくさんお世話になっているから、絶対縁は切ったらダメって言われてますので、僕が就職したらお願いします」と言われ
別に私じゃなくてもいい、違う会社でもいい、だけど1番は元気であってほしいから、これからしんどくなったりしたら無茶はしないで、いろんな人に相談してくださいね
それだけ伝えて
帰り道泣きながら会社に戻っていきました
これが私が初めて自分のお客さんで、死亡保険金を出した時でした
自分の知ってる、仲良くしてくれた方が亡くなるのは辛い
せいぜい今まで自分の祖父くらいしか経験がなかったので
まだ若い方が無くなるのは辛い。本当なのかな?って疑ってしまう
正直この時は入社5年目だったのですが、自分の中でショックが大きすぎて、これからこんな事が何度もあるのは辛すぎるから辞めようかと考えました
ただ、この息子さんに会った時に、ふとOさんが息子さんに伝えたいけどなかなか伝えれないと言っていた話があって、それを代わりに伝えたら、息子さんが凄く喜んでくれて
ああ、私は伝書鳩の役割もあるのかな?って
なかなか本人には伝えられない、知り合いにも言えないけれど、私の立場だからこそ話してくれて、それをどこかに届けるのも仕事なんだと
そう思うと、保険が外国で「ラストラブレター」って言われる意味にも通じてくるなと感じました
息子さんからはあの後から会ってません。連絡もないです。実は最近、Oさんのマンションに他のお客さんで行く用事があり、集合ポストをみたら名前が変わっていました。きっと売り払ってしまったと思います
別に私に恩義とかなくていいんです。私はただあの2人の兄弟がどこかで元気に過ごしてくれていたら、それだけでいい。そう願っています。