何とあなたが…

 たまに何となくテレビを観ていると地元の美術館で来場者が一万人を越えましたといったニュースを流している事がある。
たいていその美術館の館長さんのコメントや記念すべき番号に来場したお客さんのインタビューが放送される。
私はこの来場者何番目という人に心底憧れる。
 何なら「いやーまさか自分がなんて光栄です」と事前にセリフを準備している位である。
しかしそんなよこしまな人間には決して幸運の神さまは微笑まない。
もともとあまり美術館や展示会などには行かないので当たる確率はさらに下がる。
先日は駅前図書館の来館者が300万人を超えたというので当選?した人がテレビに映っていた。
あーこれは自分にもチャンスがあったかもなと思うが、この図書館を利用したのは三回しかないのでそうそうキリのいい入場者にはならなかっただろう。
 同じ理屈で憧れたのはインターネットの掲示板の「キリ番」である。
蛇足だが「キリ番」とはホームページなどを閲覧した時に表示されているカウンターでキリのいい数字を踏んだ時のことである。
777とか1000とか数字が大きければ大きいほど当たる確率が低くなるシステムで「キリ番」をゲットした人は掲示板で報告しなくてはならなかった。
ほんの十年くらい前にはまだそういう文化があったと思うが、これはすっかり廃れてしまった。
 断わっておくが私は決して目立ちたがりではない。
どちらかというと人目に触れずにひっそりと生きて行きたいと思っている。
でもそんな地味な性格なのにどこかで脚光を浴びたいという欲も人並みにはある。
「はい!はい!私が!私が!」という押しの強さは微塵もないが、たまに降ってわく幸運は享受したいと思って暮らしている。
 そんなここまでの人生のハイライトと言えば月並みだが結婚式になるのだろう。
新郎なんて新婦の添え物でしかないが、それでも来場者の視線を一身に浴びる経験はなかなかできるものではない。
「おめでとう!」の祝福の嵐の中に放り込まれると人は変にテンションが上がることをその時に学んだ。
結婚式の最後に新郎の締めの挨拶をしたのだが、そこまでの高揚感で頭が真白になってしまいスピーチがグダグダになってしまい最後に「ありがとうございました!」と言った時には脂汗をグッショリかいていた。
 それ以降の人生で人前で何かをすると言えばせいぜい忘年会のカラオケくらいであり、あんなものは誰も聞いてはいないので目立っているという気分にはならない。
どうやら私は今の何となく「主役感」に欠ける生活に不満を持っているようである。
 それは気の持ちようでどうにでもなるし、人生みんなが主役だよ!と70年代ドラマのようなセリフには心を許せないへそ曲がりな自分がいる。
そこまで重い話じゃなくて、たまにはどこかでヒーローインタビューを受けてみたいなぁという単なる願望である。
マンガや小説だったら脇役で十回に一回くらい存在感を示せるようなポジションで充分である。
野球だったら守備固めとかプロレスなら前座の壁といった所、マンガだったらスラムダンクの「メガネ君」こと木暮君あたりのポジションが収まりがいい気がする。
 あれこれ書いてみて何となく今後の方針が決まったような気がして気持ちがすっきりした。
これからも何かの機会にいい意味で注目を浴びてもいいように普段から服装や態度に気を付けようと思う。
「ええっ!本当に私でいいんですかっ」という百点満点のリアクションを心に忍ばせながら今日も生活していこう。
ああ、「キリ番」憧れるぅ。