不動の寝袋

小さい頃から寝相は悪い方だったが、最近になってかなり悪化している。図体のデカい今となると、その影響もなかなか甚大だ。
枕が足元にあると思いきや自分のほうが半回転していたなんてのは序の口である。
悪いときには枕が真ん中から二つになっていたり、蹴り飛ばされた布団が部屋の隅に転がっていたり、目覚し時計はうんともすんとも言わなくなり、俺は体温が下がりきって三途の川を見る。
冬にこれじゃ流石にいつか死ぬなと思い、寝袋を買った。
キャンプ用の、でっかくて丸洗いできる、エジプトのミイラ入れみたいな形したやつ。
ちなみに五千円くらいした。いっときの気分で衝動買いしてしまう性格はそのうち直さねばならない。
まあそれはともかく、包まってみる。
開いた部分に体をねじ込み、首まで覆って内側からチャックを上げる。やはり少々窮屈だが、すっぽり包まれた構造上、蹴り飛ばすことはできない。これならきっちり温かく眠り、爽やかな朝を迎えることができるだろう。ミノムシみたいで少々不格好だけど。
いい買い物をしたなぁ。
満足げに目を閉じると、すぐに睡魔がやってきた。
そして朝。
全身を刺すような寒気に叩き起こされ、爽やかとは別ベクトルの目覚め。
俺は、寝巻き以外何も身にまとっていなかった。冬の早朝の容赦ない寒気に子犬のように身を震わせていた。
なんで。
俺は確かに寝袋を……。
くだんの寝袋は、そこにあった。
ただし、チャックは下がっていなかった。寝袋としての形のまま、そこにあったのだ。
夜に何があったんだ。
寝ぼけた俺は何をしたんだ。
チャックを下ろして這い出し、律儀にチャックを上げ直したのだろうか? 寝ぼけてんのに?
それとも、掴んだウナギが逃げるみたいに寝袋からズルズルと逃れたのだろうか? 体がガチガチな小デブなのに?
寝ている姿を見る方法など、あんまりない。
多少はある。
今夜、寝袋で寝て、また同じ謎を残す目覚めとなったのなら。
俺は防犯監視カメラを衝動買いしてしまうかもしれない。