5年待ちのパン屋「ヒヨリブロート」の塚本久美さんが教えてくれた本当においしいパンの話、自分らしく生きるためのヒント[AD]

※このShortNoteは、カンゼン( http://www.kanzen.jp/ )の提供でお届けします。
うつくしいもの、おいしいもの、そして心が満たされる何か。そんなものたちに出合ったとき、「どんな人が作り出したものなんだろう?」と考えるようになりました。
豊かな自然に囲まれた兵庫県丹波市氷上町に、「HIYORI BROT(ヒヨリブロート)」というパン屋さんがあります。
▼HIYORI BROT – 旅するパン屋
http://hiyoribrot.com/

この工房でパンが焼き上がるのは、新月が満月になるまで、そして満月になってから数日を含めた20日間だけ。焼きたてのパンを急速冷凍し、通信販売でお客さまのもとへ届けたら、その後の10日間は食材探しの旅へ……。

そんなちょっと変わったサイクルで活動するパン職人・塚本久美さんに、彼女が影響を受けたパンやパン作りのスタイルについてお話を伺いました。

■パンよりごはん派、26歳からのスタートしたパン職人生活

新卒で入社した大手広告代理店に約3年勤務したのち、まったくの未経験ながら、パンの名店「シニフィアン シニフィエ」(東京・世田谷区)に入店。塚本さんがパン職人としてのキャリアのスタートは、26歳のときでした。

「最初に言っておくと、もともとパンが大好き!というわけではないんです。両親がパンを食べていても、私はごはんを食べていたくらいだったので(笑)」

「そんな私がパンに興味を持ち始めたのは、大学で出会った親友がパン職人を目指していたから。彼女と遊ぶときは、パン屋巡りが定番でした。知らない街へ行って、店構えや並んでいるパンを見て、『どんな人が作っているんだろう』なんて想像するのが楽しくて」

■お気に入りのパン屋さんを教えてもらいました

学生時代からの趣味は社会人になってからも続き、都内だけでも巡ったパン屋の数は100軒以上。たくさんのパンを食べていくうちに「小麦の味がしっかり感じられて、しっとりしているパンが好き」だと気づいたそうです。
たしかに、パンにはそれぞれ個性があり、製法や技術によって味は大きく異なります。おいしいパン作りを追求する塚本さんに、都内おすすめの3店舗を教えてもらいました。

まず挙がったのは、塚本さんのパン作りの出発点となった「シニフィアン シニフィエ」。

▼シニフィアン シニフィエ
http://www.signifiantsignifie.com/

「シニフィアン シニフィエは、一つひとつのパンが本当に丁寧に作られているんです。私の師匠である志賀勝栄シェフは、『一口でどんなパンなのかがわかる』ことを大切にしています。煮詰めた赤ワインで仕込んだ生地に、マカダミアナッツやピスタチオ、アーモンド、カシューナッツ、いちじく、クランベリーなど具材がたっぷり入っているパン・オ・ヴァンは、ぜひ食べてほしい一品ですね」

次に教えてくれたのは、「ブーランジュリー ボネダンヌ」(東京都・世田谷区)。

▼ブーランジュリー ボネダンヌ
https://www.facebook.com/806125039413516/

「フランスで修業したパティシエ出身の店主のお店で、『マドレーヌがおいしい』と聞いて足を運びました。バニラビーンズがしっかり効いていて、固形なのにプリンのような味わいが面白く、このしっとりした食感のとりこになりました。あまりに好きすぎて、研修で厨房に入れてもらったこともあるくらいですから」

「もちろんパンも絶品で、なかでもお気に入りはシャルポンティエ。その場で作ってもらえるジャンボンブールのバゲットサンドも大好きです」

最後は、「カタネ ベーカリー」(東京・渋谷区)。

▼カタネ ベーカリー
https://www.facebook.com/kataneb

「実は、カタネさんの厨房にも入らせてもらったことがあるんです。このミルクロールはすっごくしっとりしています。長時間発酵のフランスパンはいい気泡ができていて、とてもいい香り。カタネさんのパンは毎日食べたくなるような、日常に寄り添うパンですね」

「一口にパン屋と言っても、ディスプレイもラインナップもその個性はさまざま。唯一共通しているのは、『おいしいパンを食べる小さな幸せ』を提供しているということです。そんな職人としての仕事に、いつしか憧れを感じるようになりました」


■おいしい時間を作ったら消えていく、だから愛おしい

とはいえ、パン作りがしたいなら、趣味として楽しむ手もあったはず。パン作りを仕事にするのは大きな決断だったと思われますが、塚本さんに迷いはなかったのでしょうか。

「私には、こんなパンが食べたい!という願望がないんです。そういう気持ちがあれば、パン作りは趣味でよかったのかもしれません。ただ、人が喜んでくれるモノづくりに魅力を感じたからこそ、いまの仕事に繋がっているのだと思います。そのモノの対象が、私の場合はパンだっただけ。組み合わせる食材を考え、どんな仕上がりになるのかを想像し、パンを焼く。それが何より楽しい」

「料理や手芸が得意な母は、『自分が作ったモノは、人の手に渡るから価値がある』という考えを持っていて、私もいつからかそう思うようになりました。形こそあれど、おいしい時間を作ったら消えていく。だからこそパンは、私にとって愛おしい存在なんです」
なるべく顔の見える生産者さんから食材を仕入れること。これは、ヒヨリブロートのこだわりのひとつです。

「農家さんがどれほどの手間をかけて農作物を育てているかを知るのは、とても大切だと思っています。その想いに触れることで食材を無駄にせず、その良さを最大限引き出したいという気持ちがより強くなりますから」

「おいしいと感じるものは、既製品でも取り入れますね。丹波乳業の飲むヨーグルト『のんじゃえ丹波』をそのまま使ったブリオッシュも作りました。パンを媒介に、お客さまに地域の食材を知っていただくこと、その土地を好きになってもらえること。そんなきっかけが作れたなら、パン職人としてこんなに喜ばしいことはありません」

■目指すは、田舎のおばあちゃんからの贈り物

独自の視点でパンを愛する塚本さんが月を見てパンを焼くようになったきっかけは、ドイツでの修業時代にさかのぼります。月齢を基準に農作物を育てる農法があること、そして月の満ち欠けによって酵母種の発酵速度が変化することを知ったことが、その後の活動に多大な影響を与えました。

「パンを焼いている20日間はあっという間に過ぎていきます。正直に言うと、365日パンを焼く方が楽だと思うんです。10日間パン作りをお休みすると、酵母種の調整からしないといけないので。でも、飽き性の私はパンをもくもくと焼いているだけでは、きっとダメになってしまう。おいしいパンを作るためには、生産者さんに会いに行って、一緒に手を動かすことが大切だと思うから。私にとって旅に出る期間は、パン作りになくてはならない時間なのです」

「手帳やカレンダーだけ見て過ごしているよりも、『月が見えてきたな。よし、がんばろう!』みたいな方が、気持ちが乗ってきますね。パンは生きものだから、パン職人は飼育係としてパンのご機嫌をとってあげればいい。本当に毎日同じ日がなくて、それがパン作りのおもしろいところですね」

これまでの人生でたくさんのパンを見て、食べてきた塚本さん。はたしていま、どんなパンを焼きたいと考えているのでしょう?

「ごちそうパンですかね。高級という意味ではなくて、自分の足でいい素材を集めて、パンを待っていてくださるお客さまに、できるかぎりのおもてなしをしたいな、と」

「イメージは田舎のおばあちゃんが送ってくるような、突然届く贈り物。そのときの旬のおいしさが詰まっていて、食べていてじんわりおいしさが染みるようなパンを届けられたらうれしいですね」 

■パンを通して繋がる、人との出会い

塚本さんは2018年7月、初の著作「月を見てパンを焼く」(株式会社カンゼン)を上梓しました。本書では、修業時代の経験やヒヨリブロート立ち上げの経緯、パンのレシピ、これからパン作りというビジネスを通して叶えたい夢を綴っています。

「出版にあたり、これまでの自分の人生を振り返ってみたら、誰かの『やってみたら?』という提案に『それ、いいかも』と挑戦するのを繰り返していたら、さまざまな経験を重ねてきたことに気づきました。自分のやりたいことがわからない人は、周りの提案に応えてみると、何か道が見つかるかもしれませんね。この本が、誰かが何か行動を起こすきっかけになればうれしいです」
塚本久美(つかもと くみ)
パン職人、旅するパン屋「ヒヨリブロート」代表。リクルートでの広告営業、情報誌の商品企画を経て、2008年に「シニフィアン シニフィエ」(東京都・世田谷区)で志賀勝栄氏の下へ弟子入り。2016年10月に兵庫県丹波市に「ヒヨリブロート」立ち上げ。パンをひとつも無駄にしない方法として、焼き上げたパンを急速冷凍し、鮮度を保ったまま全国の消費者に届ける受注生産の通販を開始。月の暦に合わせて20日間パンを焼き、10日間は生産者のもとを訪れる生活を続けている。

▼「月を見てパンを焼く 注文殺到で5年待ち 丹波の山奥でパンを作る理由」(カンゼン)

取材:伊東ししゃも
文:関紋加(ノオト)
編集:有限会社ノオト
写真:魚住貴弘(3~6、10枚目は除く)