そのドアは意外と軽いのかも?”Chime”から始まる多大なる幸福感。sumikaが放つ音楽の魅力にフューチャー。

幼い頃、近所の子と遊びたくてチャイムを鳴らしに行くのにとても緊張していたことを思い出した。
ただ”ピンポン”と押すだけなのに、その頑丈そうなドアの向こうにいる世界はとても遠い。
そんな時に背中を押してくれる曲が集められた1枚のアルバムがリリースされた。
sumikaの『Chime』である。
2枚目となるフルアルバムは、この春の季節に相応しく明るくきらきらした曲が揃う。
それに伴うリリース・ツアーの初日は、誰も邪険にしない、
まさに尋ねてきた人(=当日のライブのお客さん)全てを、ドアを開け放って受け入れ
全員に幸福感を分け与えたとてつもなく素晴らしい一夜となった。
そんなsumikaの魅力にフューチャー。
まずはアルバム『Chime』のお話から。
このアルバムを説明する前に今回のリード曲を聴いてみて欲しい。
■10時の方角
”はじまり はじまり いざスタートライン ここからは補助輪なし”
という物語の始まりのような可愛らしい歌詞が特徴的ではあるが、
この春らしいイントロで始まり、まさに誰かの家に尋ねに行くというコンセプトとしては
まさに最初に相応しい曲である。
ライブのときもこの曲が最初に演奏されたが、今回のライブが初見(かくいう私の同行者も初見)という方も多い中、緊張をほぐす曲として位置にあったと思う。
誰かと仲良くなるためには、まず自分が心を開くことというのはよく聞く話ではあるが
sumikaはそれを音楽として体現し、表している曲なのかもしれない。
■ファンファーレ
映画”君の膵臓を食べたい”の主題歌でもあるこの楽曲。
”夜を超えて 闇を抜けて 迎えに行こう"と前向きな歌詞が印象的で、今までの彼らがリリースしてきた曲の雰囲気を思い返すと少し力強い感じが全面的に出ている。
ライブ当日は初めてこの曲を夜に聴いたわけだけど、爽やかなイメージが強いMVからすると
違ったものに聞こえて何度も聴いているはずなのに新鮮であった。
■フィクション
アニメ”オタクに恋は難しい”の主題歌であるこちらはとてもポップで心が弾むような楽曲は、
イントロが流れると会場中が沸くほど彼らの代表曲となった。
このアルバムでは、ファンファーレの次に収録されていて、「10字の方角~ファンファーレ~フィクション」とアッパーなチューンが続いていくので、ここまでの流れが気持ちよく、初めて彼らの音楽に触れる人でもすんなりと彼らの世界に入り込める構造となっている。
尋ねてくれた人全員を受け入れるその寛大さは彼らの音楽の屋台骨であるので、それを上手く序盤に持ってきた流れとなる。
ここまで、何の気なしに彼らのアルバムを紹介していたが、
すでにこの紹介の順番がそのまま『Chime』の収録曲順になっているあたり
完全にsumikaの戦略に乗せられたような気がしてしまっている。
ここからは動画はないが、アルバムの中に収録されている中からおすすめの曲をご紹介。
■Monday
月曜日、と聞くと会社も学校も5日間だし、休みは2日しかないから気分が落ちる”ブルーマンデー”と言われ、日曜日の夜は明日からまた仕事なのかとサザエさんを見ると気分が下がる”サザエさん症候群”が有名な文言ではあるくらい一番テンションが下がる月曜日である。
それをここまで明るく、優しく、そしてちょっと微笑ましく歌えるのはきっと彼らくらいだ。
”曖昧な関係は嫌だった”、”境界線が邪魔になった”とかそのフレーズも可愛らしくちょっとした物語を想像したくなるような曲になっている。
■Strawberry Fields
こちらはアルバムで聴くのもおすすめではあるが、これは生で聴いてほしい曲。
何故かと言うと、ギター、キーボード、ドラム、ベースのソロが盛り込まれているから。
片岡健太(Vo/Gt)もこれをライブで歌うときは、基本的にハンドマイク。
楽器隊にすべての信頼を預けたうえで、片岡自身はボーカリストとしての仕事をする。
一人一人の良さを曲の中に詰め込んで、バンドとしての技術力を見せつけてくれた曲である。
■Familia
最後はこのアルバムのトリを飾ったこの楽曲。
sumikaはそのバンド名からも言えるように誰かの”住処”であることと、”家族”を大切にすることに重点を置いている。その考えから多幸感が表れているであろうが、この曲はとくにその色が濃くでていると言える。
一聴しただけで、気分が明るくなるような音色にサビの部分での観客とのコール&レスポンス。
チャイムを鳴らした先にある、その温かく楽しい世界を見事に表現していると思う。
この曲が最後に来て、初めてこのアルバムのタイトル"Chime"が意味を成すということになると考えても過言ではない。
今回のツアー初日は、セトリの公表は控えて欲しいという
運営側からの放送が会場内で流されたため、ライヴ・レポート形式にはまとめなかった。
これから16か所ほど日本全国を行脚する予定である彼らだが、
その尋ねた先々で、初めて彼らを見る全ての人はもちろん、今まで応援し続けてくれたファン全員に、これらの音楽を引っ提げて迎えに行くつもりなのだろう。
初日の多幸感や、満足感は存分に出尽くされていた夜であったし、
彼らのすべての人間を受け入れる寛容さというものにつくづく驚かされながら
今回のアルバム『Chime』の良さを十二分に引き出した魅力的なライブで会ったことは確か。
この人と人を繋ぐ最初のきっかけとなる”チャイム”を鳴らすための音楽を、
これから先も繋がっていくための大事な作品として彼らのキャリアに置いて重要な意味を持つと思うし、私たちリスナーにとってもこのsumikaというバンドを紹介するにあたって
ぜひ一番最初に手に取ってもらいたいと思って渡す作品になるであろう。
多幸感、幸福感、寛容。
という人を受け入れる上で必要な要素を全て兼ね揃えたうえで
一人一人の”住処”になるように、家族のような安心感と信頼を私たちに提供してくれるだろう。
まずは、彼らの”Chime”が鳴ったら、その少し重いドアを開けてはみたらどうだろうか。
自分が思っているよりもそのドアは軽くて、簡単に受け入れられるかもしれない。
そんな彼らの音楽に、一度触れて見て欲しい。
それでは。