台風15号とタイ人ママのあふれるナミダ

台風15号が残した爪あとは、ぼくたちが予想していたよりもよっぽど大きかったみたいだ。
その証拠に、ぼくの友人が社長をつとめる東東京の商社の倉庫も台風上陸日の夜には床上浸水をしてしまったとか。
そのせいで彼の会社の商品のダンボールの一部が水に浸かってしまい、台風の夜が明けた月曜日には36度をゆうに越える暑さの中、一日中倉庫の後片付けに追われたらしい。
その友人に対するおつかれさまの意味も込めて、彼の倉庫からほど近いタイ料理のお店で夕飯を食べた。その友人社長はタイの企業との取引が多いので向こうに年間数十回は行くような人。
ちなみにその店は40代のタイ人夫婦とその娘が経営する店で、彼らの出身地のイサーン地方と呼ばれるタイ東北部の本格的な料理が売り。
基本的には辛さは選べるけど、常連になると日本向けにアレンジされていない、本格的なタイの味が楽しめるとか。
ぼくとその友人はその本格タイ料理に舌鼓を打ちながら、タイでも洪水被害が多いという話をした。
ただ、向こうの人々は被害を乗り切る生活の知恵と国民性があるそうだ。この辺については「タイ 洪水」あたりでググると驚くべき画像がいっぱい出てくるのでぜひ一度調べてみて欲しい。
その他にもタイ文化や料理ついて、そしてぼくが好きなムエタイの話なんかをしていた。
2時間ほど飲んですっかりご機嫌になったぼくたち二人は、2軒目に移動しようとテーブルを立ちレジに向かった。
店も終盤にさしかかったせいか、長い黒髪を後ろでまとめ、肉づきがよく人なつっこそうなタイ人ママはレジ横の椅子でタバコを吸いながら休憩中。
ママはぼくたちに気づくと、にっこり微笑んで話しかけてきた。
ママ「今日もアリガトねーオニーさんたち。アナタたちムエタイスキ?ちょっとはなしキコエタよ」
友人「あ、彼(ぼくのこと)がキックボクシングやってて、ムエタイも好きなんだって」
ぼく「いやータイの人たちの強さにはホントびっくりしますよ」
ママ「ワタシもムエタイ、スキねー。ムスコがムエタイやてるから、いつもイッショにシアイミテる。マサトも、ナクなったKIDもダイスキよ。でもブアカーオもスキね。ダカラどっちがなぐっても、なぐられてもナクね。どっちが勝っても負けてもナクよ」
ぼく「ぼくもいつもブアカーオの試合観てました。マサトとKIDの試合は未だにたまに観返して泣いてます笑」
ママ「でもムエタイはスキけど、ホントはムスコにはヤラセたくないネー」
ぼく「どうして?」
ママ「ダッテあんなにナグられたらバカにナルかもしれナイよ」
ぼく「どうかな?そういえばぼくもすこしバカになったかもw」
ママ「オニーサンはツヨそうだからダイジョウブ。ぜんぜんバカじゃナイよ」
友人「まあ最近オマエの物忘れはひどいけどな」
ぼく「ひとをパンチドランカーみたいに言うなw」
ママ「でも、マサトやブアカーオみてるダケでもあんなにナクのに、ワタシのムスコがシアイでなぐられたらすごくナク。たくさんナクよ。シアイでムスコがマケたら、ワタシのナミダでこのミセもシンスイするネ」
友人「浸水したのはうちの倉庫!w」
そんな会話で三人が笑い、この日の1軒目のタイ料理屋での飲み会は終わった。
そういえば「微笑みの国」タイには13種類の微笑みがあるんだとか。
・びっくり!タイ人は「13種類の微笑み」を使い分けているらしい
この日のママの微笑みは、いったいどんな種類の微笑みだったのだろう。
そんなことを考えながら、都営浅草線終電の車両内で手すりにもたれながらうつらうつらしていた、水曜夜の23時。