スネ噛り姉弟物語

数年前の母の口癖は
お母さんもうスネがボロボロだよ!!
だった。
というのも、私の家は働いてない人が多かった。
妹はガンになり自宅療養中(無職)、弟は完全に引きこもりのニート(無職)、私は働いて実家を出てはいるものの毎月母からお金を借りていた。
私達は大人になってからも母のスネを骨まで砕く勢いで噛っていたのだ。
そんなある日、妹からLINEが来た。
(※我が家では漫画「MAJOR」に影響されて、両親の事を「おとさん」「おかさん」と呼んでいる)
大事件発生だ。
私は急いで妹に電話をした。
妹から経緯を聞くと、母は外で飼っている柴犬の大神(ゼウス)にエサをあげようと、勝手口から外に出たらしい。
(愛犬ゼウス(2016年10月没))
青森県の2月は雪が深く積もっている。
勝手口の階段は、雪で急な坂になっていた。
母はめちゃくちゃ横着なので、お構いなしに激坂をサンダルで下ったところ足を滑らせて転んだ。
妹の話によると、母は転んで着地と同時に

「折れたかも!!!!!!」

と叫んでいたらしい。
凄い判断力だなと思う。実際折れていたし。
折れたとなっては大変だ。
その時父は仕事に行っていたので、家には療養中で外に出られない(免疫力が極端に弱まっているから)妹と、引きこもりニート歴3年の弟と犬しかいない。
母も正直めちゃくちゃ心細かったと思う。
この時の母の足はあらぬ方向に曲がり腫れはじめていて、母は弟にすぐ救急車を呼ぶように指示を出した。
私は一応妹に、「お母さんの足の写真撮った??」と聞いたら
「その時怖くて震え過ぎてたから撮れなかった〜」と言っていた。
ちなみに、妹は治療後しばらくは常にガタガタと震える体質になっていて、焼き肉奉行をやらせた時なんかは肉が取れない位に震えていた。
それでも「このレベルは震えてるうちに入らないよ。」と言っていたのに、今回は「震え過ぎて写真が撮れなかった」と言っているという事は、この時の妹は四〜五人に見える位には震えていたのではないかと思う。
しばらくすると救急車が家の前に来たのだが、多分救急隊員は「誰を連れていけばいいの??」と一瞬悩んだと思う。
家の中には明らかに病気の女性、見るからに不健康なひ弱そうな男。情報量が多い。おまけに犬が狂ったように吠えてるし。
家のまわりには近隣の住人達が野次馬で集まっていた。
恐らく、近隣の住人達も「あれ?この家、こんなに人が住んでたの??」と驚いていた事だろう。
母は自ら救急隊員を呼び、救急車に乗った。
そして、付き添いで弟が付いていく事になった。
消去法だ。
消去法で引きこもりのニートが生き残るパターンってあるんだと思った。でも命には変えられない。
偉いもんで弟はきちんと母に寄り添って着いていった。感動エピソードだ。
結果母は入院し、手術でスネには金属が埋め込まれる運びとなった。
あれから数年経ち、妹の治療は順調に進み今では外に事務仕事をしに出ている。
弟はたまに父の実家(農家)にお手伝いに行くようになり、私もお金を借りなくなった。
不思議なもので、母はスネに金属を入れてからあまりスネを噛られなくなったのだ。逆に母が足を折ったのは私達がスネを噛りすぎたからだったのだろうか。
固すぎるスネは噛れない。子供にスネをかじられている親御さんはスネに金属を入れてみてはどうだろう。信憑性はゼロだけれど。