メイクボックス

幼い頃、母が化粧をするのが不思議で仕方なかった。
母が今顔にはたいている粉は何なのか。
あれにはなんの意味があるのか。
毎朝化粧をする母に質問攻めをしては、母を困らせていた。
そんな私をみかねた父が誕生日に、キッズコスメセットを買ってきてくれた。
マニキュアやピグメント、リップスティックとグロスが入っていた。
今となっては普通の事だが、マニキュアを爪に塗った時のあのヒヤリと冷たい感覚には興奮を覚えた。
だが小学校時代、私はこの豚のように肥えた体型と特別可愛くもない顔面がコンプレックスだった。
見た目だけ一丁前なサッカー少年にはいじめられ、仲が良かったと思っていた子にも裏切られた。
もう散々だった。
何で可愛く生まれなかったのかと呪った。
夜な夜な一人で泣いてばかりの日々が2年間ほど続いた。
しかし、そんな悲しい日々は終わりを終わりを告げる。
部屋の掃除をしている時、あのコスメセットのボックスが出てきた。
私はもう捨てたとばかりに思っていたから、驚いた。
試しに開けると、中身は勿論処分されていたが、当時のままで懐かしかった。
ああ、私はここにあったグロスをよく塗ってたっけ…。
今まで忘れていたけれど、マニキュアやリップを塗っていた時皆が褒めてくれたっけ。
それから1年、私はダイエットを頑張り、服のセンスも磨いた。メイクだって覚えた。
そのおかげで、容姿でいじめられることはなくなったし、女子からの評価も上がった。
あのメイクボックスはまだある。
本当に可愛くなるヒントをくれたメイクボックスが。