カオちゃんのカードケース

高校生の時にカオちゃんという友達がいた。カオちゃんは黒髪が綺麗な子で穏やかで優しく大人びた雰囲気があったので、いつからなのかわからないが皆の間で「カオちゃんには年上の彼氏がいる」という噂話が出始めた。
仲が良かったカオちゃん本人からは彼氏の話を聞いたことがなかったので、これは人に話せない事情の相手なのだろうし、カオちゃんから話してくるのを待とう。そう考えて自分から聞くことはしなかった。
でも噂を聞いて以来気になってしまいカオちゃんのことを見ていると、カオちゃんは体育の時間には必ず制服の胸ポケットからサッと小さなカードケースを取り出し、大事そうに鞄にしまうことがわかった。「あれは彼氏の写真に違いない」そうは思ってもやっぱりカオちゃんに聞けず、モヤモヤとしたまま高校生活を終え卒業式を迎える事になった。
卒業式が終わったあとの教室で、泣きながら抱き合ったり写真を撮り合う同級生を眺めていたらどうしても気になって、カオちゃんに「その写真・・・」と胸ポケットを差して聞いてみることにした。
「やっぱり気づいてた?」照れくさそうに笑うカオちゃんを見て、やっぱり彼氏がいたんだと思った。でも話すら聞かせてもらえなかったと少し落ち込んでいたわたしにカオちゃんは「デスコには見せようかな」と言って旧校舎のトイレに連れていき、胸ポケットからカードケースを取り出して優しく手渡してくれた。
「カオちゃん・・・これ・・・・・舞の海?」
わたしの手には国技館をバックにブレにブレている舞の海の写真があった。カオちゃんは舞の海のファンだった。ファンというより追っかけだった。カオちゃんが大事そうにしていたのは、出待ちの際に撮った舞の海の写真だった。
高校生が相撲好きなんて恥ずかしいからみんなには言うことが出来なかったんだと
その時は教えてくれたけど、そんなカオちゃんももう二児の母。いまは 隠岐の海がお気に入りだそうで。