無題

何年か前の夏にテレビで見た。忘れられない話。詳細は記憶違いがあるかもだけど、大筋はこんな話。
それは太平洋戦争の話。もうおじいちゃんになった当時のアメリカ兵が日本の特攻隊の生き残りのおじいちゃんに会いに行った話。
アメリカ兵のおじいちゃんにはどうしても理解出来なかった。特攻隊。自分の命ごと敵機に突っ込んでいく。わからない。どうしてもわからない。彼らは死にたいのか?生きたくないのか?あれは本当に人間なのか?理解を超えた特攻隊にアメリカ兵は恐怖を覚えたという。
そして。現在。アメリカ兵と特攻隊はとある一室ではじめて出会い、話しはじめる。アメリカ兵はずっと思っていた疑問を投げかける。特攻隊のおじいちゃんは穏やかな笑顔を浮かべ遠い目で語りはじめる。
「死にたくなかったよ。」
多くの仲間が死んでいった。国のため家族を守るため。でも。やっぱり死にたくなかった。鉄の棺桶と化した戦闘機の中で特攻隊だったおじいちゃんは歌ったと言う。
「兎追いしかの山。小鮒釣りしかの川。夢は今も巡りて。忘れ難き故郷。」
おじいちゃんの歌にアメリカ兵のおじいちゃんも知らず知らずのうちに涙が溢れ出てくる。歌っているおじいちゃんもいつの間にか泣いていた。
アメリカ兵のおじいちゃんはもちろん日本の「故郷」という歌は知らない。この時はじめて聞いた。でも。その歌を聞いた瞬間に全てを理解したという。敵もまた人間だったのだと。
最後に二人は握手して別れた。もう二度会うことはないだろう。
夏が来るたびに二人を思い出す。