22世紀ディストピア

アニメや漫画のキャラクターには、往々にして細かい設定が付いている。その方が物語への共感の材料になり、得だからだ。
それは誕生日であり、出身地であり、座右の銘である。おめーらどこの散髪屋に行ってんだよってくらい髪の毛がビビッドしてるような女の子女の子した作品だとスリーサイズが必須条件だったりする。
そんなキャラ設定で特に周知されているものの一つに、ドラえもんの好物がどら焼きであることが挙げられるだろう。原作当初じゃ餅が好物だったのに、途中でシレっとどら焼き好きになってたアレ。
その好きレベルは凄まじいの一言である。あるときはどら焼きのために未来ガジェットで商売をしたり、得体の知れない菌を培養してどら焼きを産みだそうとしたり(ちなみにのび太が余計なことしたおかげで世界が滅びかけた)、かなり気合が入っているのだった。やっぱり電子基板でできている脳みそはダメだな。
ところで。
この設定について、俺は前々からどーしても気になっている点がひとつある。
それは、ときおりリメイク放送されるアニメ一話に見られる。引き出しからいきなり出てきて「きみは将来あの性悪デブのかわいくねえ妹と結婚するヨ。それとすんげえ借金苦」だとかほざくあの一話だ。
そこでは、いつもお決まりのシーンがある。
のび太がおやつで食ってるどら焼きを目にし、興味津々で食べて、「美味しい!」と目をハートにするみたいな描写が必ず入っているのだ。
つまり、この青いダルマ型機械は未来の世界でどら焼きを食べたことがないのである。
こりゃあ非常に妙なのだ。
だって、例えば天津飯って名前の人がいたとして、彼と中華料理屋に入ったら俺なら絶対天津飯を食わせる。チャオズが自爆しようが食わせる。
彼が酢豚定食なんか頼もうものなら特大のため息をつくのは間違いないだろう。天さんにとっちゃはた迷惑な話かもしれないが。
なのに、22世紀の人間は『ドラえもん』という名のロボットにどら焼きを食べさせていない。これは由々しき事態というほかはない。
これについて、以下の考察ができるだろう。
(1)
22世紀の世界は、ドラえもんにどら焼きを食わせるような『軽いジョーク』が禁止されたディストピア世界なのではないか。
たとえば寒くて足が震えてる人に「生まれたての小鹿かよw」などといえば、即座に黒い覆面の秘密警察が現れて拉致され、「ダーウィンが来た」を全話見るまでおうちに帰れないという罰を受けることになる。反省の意思が見えなかったらどうぶつ奇想天外まで見せられる。終始動物にあんま興味なさそうだったみのもんたの赤ら顔がアレルギーになることだろう。
他にも「今何時?」と訊いて「そうねだいたいね~」と返せば、サザンオールスターズが延々流れるだけの白い部屋に閉じ込められる。「あつはなついね」などとぬかせば、林修の知識がダウンロードされたアンドロイドに取り囲まれて国語の勉強させられる。
そんな恐ろしい世界故、ドラえもんにどら焼きを食べさせるなんて軽いジョークを誰も行うことがなかったのだという仮説である。
(2)
小豆の高騰とかでどら焼きがそもそもないんじゃないの。
あるいは、なんか古臭いとかそんなんで自然消滅。
(3)
藤子せんせいもアニメ会社の人もそんなこといちいち考えてない。
さあどれだろうか。
俺は(3)だと思う。