ブックレビュー『血みどろ臓物ハイスクール』

1歳で母を失ったジェイニー・スミスはメキシコのメリダで父ジョニーと暮らしていたが、
10歳の時点で既に近親相姦関係にあった。
ところが、父に新しいガールフレンドが出来、厄介払いされそうになって嫉妬・狂乱。
ニューヨークで不良グループと付き合い、
乱倫・暴力・飲酒・薬物三昧からの中絶まで体験。
売春業者リンカーに売り飛ばされ、監禁されている間に、
自らの人生について、あるいは、ホーソーン『緋文字』の感想、
ペルシャ語の独学の記録、散文詩――他を綴った。
その後、癌を発症してリンカーに見捨てられたジェイニー14歳は
自由の身になって旅に出たが……。

1970年代後半に執筆され、
1980年代に日の目を見たという「時代の徒花」的散文詩小説。
恋愛及び性の相対化。
父と娘の近親相姦関係を描き、
俗に「純愛」と称され賛美される概念をコケにする態度は
倉橋由美子の初期作品に似た趣きでもあり、訴えたいことはよくわかるのだが、
個人的に好みではない表現技法だったので読後の満足度は低い。
前半は一応、小説の体(てい)を成しているので
ニヤニヤしながら楽しんでいたのだけれども……。

まあ、「魂にはその意のままに彷徨う自由がある」(p.282)のだし、
作者が内面の混乱や社会に対する疑問を、
この表現形態で発表したのも当人の自由だし、手に取って読むも読まぬも、
どんな感想を抱こうとも我々の自由なのだよな、と思った。
ちなみに、ジェイニーがタンジェでジャン・ジュネと出会う章「夜の果てへの旅」は
ジュネではなくセリーヌの小説のタイトルだったよね……。