古い写真 追懐の旅

昭和29年、船の事故で帰らぬ人となった祖父
私が生まれる前のことだ。
祖父はどんな人だったのか、父に聞いておけばよかった。アイボリーとグレーの古い写真1枚。
小さな石の橋の上に、祖父は煙草を燻らせ得意げに立っている。
じっと見返すと祖父が「自分で探してごらん」と言っている。ふと、写真の裏側に薄い鉛筆で「兼六園で」と書いてあるのに気がついた。
祖父は、御影石に魅力されて灯篭を作る石工をしていたそうだ。煙草が大好きで、家族思いの優しい男だったよ。生きていたら孫のお前を可愛がっただろうにと、90歳の伯母が教えてくれた。
兼六園に着くと、苔むした灯篭が迎えてくれた。
祖父もこれを見ただろうか。
これは祖父が置いた灯篭だろうか。
空を映した池にかかる小さな石の橋の上で、得意げに腕を組み、私も写真を1枚撮った。
「やっと来たか」
優しい風が頬を撫でていった。