気まずくなってもあなたは気にしない... by まいこ | ShortNote

気まずくなってもあなたは気にしないのかと思うと、わたしは傷つくんです、と正直に伝えた。もう諦めたから大丈夫だよ、という返事があり、1ヶ月弱というその早さを失礼だと思うよりもホッとした。これで気兼ねなく接することができる、という自己中心的な考え、そして少しの寂しさ。
夜に歩荷トレーニング(重い荷物を背負って歩くこと)をしていたら、同じく近くでランニングをしていた彼が向かいから走ってきたことがあった。彼は膝に手をついて息を整えた後、山のお手洗い事情やら失敗談、とんでもなくしょうもない怖い話、などをひたすら喋り倒して信号で別れて去っていったので、わたしはすっかり毒気を抜かれて、家に帰ってから一人で笑ってしまった。なんなんだ、中学生か?いや、小学生みたい。この人、ミステリ映画の犯人が最後までわからないタイプだろうな。悩んでいた自分が馬鹿みたいである。
彼を見ていると弟を思い出す。弟は小学生くらいのころ、少年ジャンプを読んでいた。そして面白い話があると、母親に読み聞かせる。お母さん、今週のこれ面白かったから読んだ方がいいよ、と言うのだが、さして興味もなく雑務に追われる母親は、はいはい後でね、とそれを軽く流してしまう。すると弟は憤慨して母を隣に座らせ、自らページをくって吹き出しから効果音まで、懇切丁寧に声に出して読み始めるのである。母親もこれには閉口して、わかったわかったちゃんと読むから、と言うのだが、すっかり信用を失っているので、弟はそれを許さない。1話分たっぷり読み終わった後で、ね、面白かったでしょ、と言うのだが、そんなの面白いはずもない。こことこの場面がさ、おかしいでしょ?と弟はなおも言い、母親はなんとかコメントを添えて同意する。この際同意しなくても、お母さんはわかってないんだから、という具合に弟は満足する。
まいこさんは来なかったけど、昨日みんなでごはん行って、誰々がこんなことを言って、と彼はそのときのことを歩きながら話してくれた。とても楽しかったんだな、そしてそれを誰かに話したかったんだな、ということがひしひしと伝わってきた。なんだか、学校での出来事を楽しく報告してくる子どもみたいだ。または、たわいない出来事に共感を欲する彼女とか。話の相手は別にわたしでなくてもいいのだろう、とは思う。でもそのことに対して嫌な気持ちにはならない。
彼が良い人でいてくれてよかった。