Love

やばい。これが相性か。
心が入ってないと気持よくないなんて言ったの誰。
物理。形状合致。フィッティング。全細胞が引き合う。抱きしめ合う。
目が眩む。考えられない。脳の何処かが焼き切れる。
三十路前にして辿り着いた境地。これが真理。まことのことわり。はふういただきました!

振られた傷を癒やしたくて、投げやりにこちらから声をかけた。
客観的にモテてる人には見えなかった。行為だってぎこちなかった。なのになのに。
「僕なんか相手にしてくれてありがとう」
そう言って去ろうとする彼。駄目だ。行っちゃ駄目だ。行かせちゃ駄目だ。
このまま行かせちゃヘビーストーカー爆誕だ。
結婚願望なんてなかった。恋愛体質でもなかった。縛ったり縛られたりなんてまっぴらだった。
でも、彼は。彼は私の御主人。私の王だ。
私を捨てたあいつの事は既に欠片も浮かばない。
なんとかしなくちゃ。なんとかしなくちゃ。
全シナプスが火花を散らす。ニューロンが唸りを上げる。
あらゆる手立てをシミュレート。
上手く言いくるめてお持ち帰り。って何言うの。
一服盛って眠らせて。って何盛るの。
今こそ目覚めよ我が能力。届け念波届けこの想い!
無情に彼が立ち上がる。伏し目がちに軽く会釈し背を向け歩き出す。
駄目だ。何も声がでない。
つと彼が振り返る。驚いた顔で踵を返す。念波届いた??
「どうしたの?大丈夫?」
真っ赤に腫らした目。ボロボロと吹き出す涙。
横一文字に結んだ口はピクリとも動いてくれない。
彼が罰悪そうに呟いてくれる。
「また会ってくれるかな」
全力で頷く。
私は多分、生まれて初めて恋をしたのだ。