丸いちゃぶ台

古い日本家屋に住んでいます。
最初は、その頃の流行りの洋間があるようなおしゃれな家を建てる余裕が無かった両親がやっとの思いで持てた3部屋だけの小さな家。
父は少しでも支払いを抑えようと、休みの日には大工さんの助手となって手伝っていたそうです。
やがて父の想いと腕の良い大工さんのおかげで赤い瓦屋根の小さな家が完成しました。後で建て増しした時の業者から「これはしっかりしたいい造りだ。」と言われたとか。
家を建てる前、会社から帰って住んでいた狭い団地の一室に寝かされている赤ん坊の私の顔を覗き込んでは「家庭っていいもんだなあ。」とつぶやいていたという父は、親を早くに無くして貧しさ故にただただ厳しい中で育った人でした。
結婚してからも貧しかった両親は満足な家具も揃えられず「義姉からお下がりでもらった古いちゃぶ台の横にお前を寝かせて、ご飯も内職もみんなそこで済ませていた」というような話を引っ越しで買い替えて少し大きくなったちゃぶ台でお茶を飲みながらよくしていました。
大人になって、私は丸いちゃぶ台を買いました。突然配達されてきたちゃぶ台を見た母は「どうしたの。ちゃぶ台なんて今使っているのがあるじゃないの。」とびっくりしていましたが、ちょうど両親の節目の年でもあって、入れ替えて使うことになりました。
「昔のちゃぶ台はみんなこんな丸いので、家にあったのは薄い板っぺらみたいなもんだったなあ。」
「義姉さんから貰ったのはこれよりもひと周りもふた周りも小さくて真ん中にヒビが入ってたもんねえ。」
その頃の物とは似ても似つかぬ丸いというだけのちゃぶ台は我が家の居間に居座り、みんなの真ん中で両親の思い出にまた家族の新しい思い出を重ねています。
両親が建てた古い家は少しずつ姿を変えながら何度もの天災から家族を守ってくれました。
また、大きな台風が迫っています。
今度も頑張って耐えてくれますように。
そして、どうか
皆様の所にも大きな被害が出ませんようにと願っています。