②婚姻届

薄っぺらい、茶色の、枠の、あの、紙。巷でよく言われる、
【ただの紙切れ】
あれのことだ。
この「ただの紙切れ」を侮るなかれ。凄まじい破壊力だ。土地の売買契約書の束なんかよりも、数千倍のエネルギーを持っているのだ。
あの、たった一枚の紙を役所に出すだけで、戸籍が独立し世帯主となり、片方の名字を変えてアイデンティティを奪う。法律という名の元に、義務と権利が生じ、一番小さな単位の社会的組織となる。
最初は役所に提出をしてサッパリした、と思っていたのだが、ふと気がつくと、畳6畳分はあろうかという石盤と化した、元は「ただの紙切れ」だったはずのものが家の中に鎮座していることとなる。
しかも、その上にはだらしなく胡座をかいた夫が、テレビを見ているのだ。布団やシーツのように、波打たせて振り払おうにも、何せ相手は石盤だ。私ひとりの力で動かせるものではない。
(イラストが得意な方に、是非描いていただきたい)
もう、ハンマーで壊すしかないのか……