社対抗 歌合戦

以前勤めていました会社の、人のいい社長と、神がかりの統括本部長とは、
僕を含めた3人組で、よく仕事をしました。

それは、ある年の年末、大阪本町に支店を構える精密機器の大手企業の支店長と役員を招いての忘年会。
食事を終えクラブに寄った後、相手の広報部長が歌いたいと言い出しました。
じゃあ……ということで社長の知る、BARへ行くことに。
 

*ここでちょっと昔の話を……

僕は社会に出た後すぐの頃、時々サパークラブやジャズハウスで歌っていたことがあります。たいそうなストーリーはありません。サパークラブのピアニストが知っているハウスにゲストで呼んでくれていただけです。

その分、歌なら少し自信があります。
どんな自信かと言うと、どんな程度にも歌えることです。
絶対気付かれずに、どんなレベルでも歌えます。
 

もちろん接待ですから、相手の方のふたつくらい下手なレベルで歌います。
それも出来るだけ笑える曲を選んで、採点機能を使えば61点くらいの感じで歌います。

それで皆さんを盛り上げて、喜んでいただくのですが、酔った勢いでときどき同席した方から失礼な言葉も出ます。
その日もそうでした。調子に乗ったその人は、最後には、
「うたが音痴の人間は、仕事も的外れなことをする」とまで言い出し、
これに本部長のイタズラ心が動きました。 

「支店長。どうですやろ、歌合戦とかやりませんか? 最高点出したもんの勝ち! 
 賞金5万円で、相手チームから出す……いうのは?」 

「ああオモシロイ、いいねえ」

  💢  

いよいよ歌合戦の始まり始まり……

敵チームとわが社の女子が互いに歌った後、相手側広報部長の渋い声が響きます。
採点は92点です。
次が本部長で社長と続きますが、二人とも80点に届かない。
―――と、ここまでが本部長のイタズラの筋書き。

僕が歌って、戦いは終了。 

 

その日の接待は当社持ち。
ご機嫌をとるのに高い経費を使っています。
それなのに、少し酔った相手の失言にムッとする、大人げない社長と本部長。

いい時代でした。 いい会社でした。 

 
◆どうしても言っておきたい失敗話。
ピアノさんに引っ張られて、有名なクラブでも時々歌いました。
いつも歌うのは布施明の「愛の歌を今あなたに」
その日は店のママにおだてられて、調子に乗って3曲も布施明を歌いました。
店の奥の席で、ご本人が聴いてらっしゃるとも知らないで……。

カラオケ合戦の賞金5万円は、社長のお嬢さんの結婚祝いに使わせて頂きました。

めでたしめでたし……